「老後にむけて月5万円の配当金をめざす」ための投資戦略
投資目的が「老後の生活の充実のため」である方も多くいらっしゃると思います。
せっかくの老後ですから、心穏やかに過ごしたいものですね。リターンを追求するあまりリスクを取りすぎることに注意したいですね。安心して過ごしにくくなれば、元も子もありません。
適度なリスクを取り、精神面に配慮しつつ、適正なリターンを期する。その一例を、以下紹介します。
ご質問
以下は、いただいたご質問です。
件名:老後にむけての投資ご相談
穂高唯希様
はじめまして。今年の2月に、三菱サラリーマンさんのブログを知り、衝撃を受けた50代ナースです。
著書もさっそく購入し、読ませていただきました。投資のことのみならず、その生き方や考え方にも深く感銘を受け、次女と結婚して欲しいと思ったくらいです(笑)(長女は今月入籍します)
現在、金融資産がほぼ貯金です。約3年前よりつみたてNISAなどを開始したものの、出口戦略(この言葉も初めて知りました)を全く考えていませんでした。FIRE達成後の生活を満喫され、お忙しくされているとは思いますが、ご返答頂ければ幸いです。
投資目的:老後の生活の充実のため
旦那さま(59歳)と私(50代半ば)ともに、つみたてNISAを3年前より開始しましたが、つみたて期間終了時の年齢を考え、来年度より一般NISA・新NISAに変更を検討中です。
その場合、楽天全米株式と楽天全世界株式の組み合わせか、eMAXIS slim米国株式とeMAXslim全世界株式の組み合わせか、組み合わせずにいずれかの1銘柄のみに絞るべきか?もしくは、他におすすめの投資信託やETFは、ありますか?
もう一点、6年後に月5万円以上の配当金を目指したいと思っています。穂高様の本やブログで自分なりに考えた結果、SPYD・HDV・VYM・BND・AGGの5つのETFに、各々500万円を一括投資か、月7万円×5銘柄=35万円の6年つみたてをと考えています(6年間配当金は再投資)が、いかがなものでしょうか?本当にお恥ずかしいですが、迷走しています。
上記2点、穂高様ならどうなさるか、ご意見を伺えればと思います。
追伸:穂高様が時々発せられる関西弁に親近感をいだきつつ、投資記事以外の登山や旅行、グルメ、健康情報、映画紹介なども本当に楽しみにしています。今はコロナの影響で自粛中ですが、47都道府県制覇の旅行も夫婦で計画しています。また老後に向けての健康と共通の趣味として夫婦で登山を6年くらいしています。登山っていいですよね。(特に私は煩悩の塊かもしれませんので…。)日本百名山のひとつである近畿最高峰の八経ヶ岳・弥山にはまだ行かれていないようなので、階段好きな穂高様に是非お勧めしたいです。
ご長女さま、おめでとうございます。もったいないお言葉の数々、ありがとうございます。大変光栄です。特に2段落目 m(_ _)m この感じのウィットに富む形、関西の方ですね?(笑)
老後に向けた健康維持、47都道府県制覇のスパイスにも、登山はぴったりですね。弥山(広島)は経験があるのですが、弥山(奈良)もあるのですね。存じ上げませんでした。八経ヶ岳もご教示いただきありがとうございます。ぜひ登って、階段も深く堪能したいです。
投資以外の記事についても、お付き合いいただき大変光栄です。ありがたい限りです。大変励みになります。m(_ _)m
回答
さて、ご質問の要旨を、以下にまとめた上で、結論を付します。
- 「楽天全米株式・楽天全世界株式」「eMAXIS slim米国株式・eMAXIS slim全世界株式」やほか商品から、どれがいいか。
私なら楽天VTI(または、eMAXIS 米国株)です。 - 6年後に月5万円以上の配当金をめざす場合、「SPYD・HDV・VYM・BND・AGG」の5つに、各々500万円を一括投資か、月7万円×5銘柄=35万円の6年つみたてか
VYM(6割)、AGG(4割)などにし、「定期つみたて」で適度な配当を得る形はいかがでしょうか。
①については、米国企業の将来に懐疑的であれば、全世界株式をトッピングする形でよいと思います。
②については、今後下落の際に精神的に耐えられるなら一括でもよいですが、ご質問者さまの場合、VYM・AGGのつみたてが適していると思います。後述します。
全米株式か全世界株式か。楽天かeMAXISか。
1つめのご質問につき、回答となるポイントは以下の通りです。
- 全世界株式の約6割は米国株。両者の主要投資先は、同じ米国。
以下整理が可能です。
- 米国の将来に賭ける
(「米国が、ほか地域よりも成長する」というシナリオにしっくりくる)
米国株 - 米国の将来に懐疑的、世界全体の成長に賭ける
(「特定の地域への投資は、同地域の成長が滞るリスクあり。一方、世界全体に投資すれば、どこかが衰退しても、ほかのどこかが発展すれば補ってくれる」という考えのほうがしっくりくる)
全世界株式
米国株
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
- eMAXIS Slim 米国株式 S&P500
全世界株式
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 上述4商品は、管理費用0.09~0.21%の低コスト商品。楽天とeMAXISの違いは、誤差の範疇。どちらでもよいと思います。
米国企業の将来に懐疑的であれば、全世界株式をトッピングする形でよいと思います。
そうでなければ、以下どちらかでよいと思います。以下両者に決定的な差異はなく、誤差レベルなのでどちらでもよいと思います。
- 楽天全米株式インデックスファンド
- eMAXIS Slim S&P500
ちなみに、
旦那さま(59歳)と私(50代半ば)ともに、つみたてNISAを3年前より開始しましたが、つみたて期間終了時の年齢を考え、来年度より一般NISA・新NISAに変更を検討中です。
ということで、この場合たしかに、一般NISA(年間投資可能枠:120万円)の方が、つみたてNISA(同40万円)より適していますね。
パフォーマンス比較(全米株式・全世界株式)
両者の「設定来トータルリターン」の比較も載せておきますね。
- 楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)
- 楽天VT (楽天・全世界株式インデックス・ファンド)
楽天VTI(全米株式) | 楽天VT(全世界株式) | |
---|---|---|
基準価額 | 16,828 | 14,559 |
※2017年9月29日~2021年4月16日
現時点では、米国株の方がリターンが優れる結果となっています。やはり、以下整理が可能です。
米国株優位の傾向が続くと賭ける
- 全米株式インデックスファンド
米国の将来に懐疑的
- 全世界株式インデックスファンド
高配当株ETF・債券ETF。一括投資か、つみたてか。
では次に、以下②についてです。
- 「楽天全米株式・楽天全世界株式」「eMAXIS slim米国株式・eMAXIS slim全世界株式」やほか商品から、どれがいいか。
- 6年後に月5万円以上の配当金をめざす場合、「SPYD・HDV・VYM・BND・AGG」に、各々500万円を一括投資か、月7万円×5銘柄=35万円の6年つみたてか
元本2,500万円あれば、VYM・HDV・SPYD・AGG・BNDへの均等分散で配当60万円/年をねらうことは、時期にもよりますが概ね可能ですね。
よりシンプルに「VYM:AGG=6:4の割合で、定期つみたて」はいかがでしょうか。(数字は一例ですので、リスク許容度に合わせてご調整いただいてもちろん問題ございません)
まず、購入タイミング(一括投資か、つみたてか)を考えましょう。
株式を購入する方法・タイミングによるメリット・デメリット
それぞれのメリット・デメリットは、下表の通りです。
メリット | デメリット | |
定期 つみたて |
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最初に 一括購入 |
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また、下図のように、市場が右肩上がりの際は一括投資が理論上の最適解になります。
以上から、以下の整理が可能です。
- 定期つみたて
→ 初心者の方にもおすすめしやすい - 最初に一括購入
→ 市場の成長性に賭ける場合、理論上の最適解になり得る。ただし、相場状況に関わらず保有し続けられるメンタルが必要など、”人を選ぶ” 手法。
市場が右肩上がりである場合、最初期に一括購入した方が合理的です。ただし、この手法は人を選びます。
また、VYMは基本的に右肩上がりですが、SPYDはボラティリティが高めです。つまり、後者は購入タイミングによる影響が大きくなります。
下落時にまとめて購入できれば理想的ですが、おそらくご年齢やご質問文から察するに、タイミングを計ってまでトータルリターンの追求が最優先事項というわけではないかと存じます。
VYM:AGG=6:4
せっかくの老後ですから、リターンを追求するあまりリスクを取りすぎて安心できなければ本末転倒かもしれないですよね。
そこで、もし、「リスクを抑え目でほどほどのリターンでよい」という場合、よりシンプルな形で「VYM6割・AGG(BND)4割」は、いかがでしょうか(もちろん数字は一例ですので、リスク許容度に合わせてご調整いただいて問題ございません)。
値動きの安定感などから、高配当株ETFはVYM1本に絞り、AGGまたはBNDを組み込んで下落に強い形を挙げました。
まとめ
以下再掲します。
- 「楽天全米株式・楽天全世界株式」「eMAXIS slim米国株式・eMAXslim全世界株式」
どれを選ぶか。
私なら楽天VTI(または、eMAXIS 米国株)を選びます。 - 6年後に月5万円以上の配当金をめざす場合、「SPYD・HDV・VYM・BND・AGG」の5つのETFに、各々500万円を一括投資か、月7万円×5銘柄=35万円の6年つみたてか
VYM(6割)、AGG(4割)などにし、分散を図った上で適度な配当を得る形が一案。
なお、為替リスクを避けたい場合は、AGG・BNDの代わりに、個人向け国債(変動・10年)が選択肢になります。
- 10年満期で、1万円から、個人の方のみ購入可能。
- 利率が半年ごとに変わり、債券市場の実勢に合わせて運用可能。市場金利が下がっても、年0.05%の最低利率が保証。
- 発行後1年を経過すれば、償還前に中途換金が可能。
債券ながら、1年経てば中途換金可能です。この辺りが個人向けに設計されていますね。利率は預金よりはマシという塩梅です。
ゆうちょ銀行の商品説明を載せておきますね。
ご参考になれば幸いです。ご不明点あればおっしゃってください。
思い描いていらっしゃる老後をお過ごしになられること、祈念しております。
Best wishes.
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