お金を寝かせておくのは、もったいない。共働き世帯の資産運用。
お金というのは、預貯金にあずけておくだけでは、実質的に増えにくいです。
補足:預貯金に偏在させるリスク
高金利の時期に名目上は増えたとしても実質上は増えていないこともあります。今のような低金利では名目上もほぼ増えません。
ましてやインフレになれば、実質的には価値が上がるどころか下がります。
視点を世界に、そしてもっとマクロに移せば、他国との物価と比べて日本の相対的な購買力は明らかに以前より落ちています。
ひとりの国民として憂慮することですが、嘆いても始まりません。国民ひとりひとりが、期待できる市場(たとえば全世界株や、米国株)に資金を投じて、自己防衛することが方策になります。
さて、以下ご質問をいただいています。
ご質問
こんにちは。〇〇と申します。
ご多忙のところ恐縮ですが、
一家の資産形成の仕方について迷いがあり、
(ちなみに私も北京大学に留学経験ありです。未明湖のあたりや、
今我が家には3000万弱の預貯金(一部株式等)
著書やブログを拝見する限り、投資に時間を割けない場合は、
- 保有現金の考え方(絶対額?株との比率?)
- 株式ポートフォリオの考え方
- 投資タイミングの考え方
アドバイスいただくことはできますでしょうか?
【ステータス、収入】
- 夫 35歳 外国含め転勤の可能性あり
年収800万程度 - 私 32歳 地域限定 総合職
年収700万程度 - 3歳の男の子
【例えばこんなことにお金を使いたい】
- 子どもの教育(高校あたりで希望があれば留学させてあげたい)
- 文化、教養取得(コロナ後は海外旅行や、美術館巡り、
ミュージカル鑑賞等したいです - 子どもが大きくなったら、その時のライフスタイルや社会情勢にあ
わせて、どこかに住居を買いたいです(未定、不動産市況による)
【家などの資産】
特にないです。
- 会社至近の賃貸16万 (月5万の家賃補助)
→ 三年くらいしたら少し広めの家に引っ越したいです(家賃プラス3、4万?)
【投資 毎月】
- 純金積み立て 20,000円
- つみたてNISA(私のみ) 33,333円をemaxisの全米と全世界半分ずつ
- iDeCo(私のみ) 12,000円を同上の内容
- ジュニアNISA 66,666円を同上の内容
- 持ち株会(会社が買い付けの5%補助) 50,000円
- 夫の持ち株 1,060円
【投資 たまに行う】
- NISA(夫)国内株式
- 米国個別株式を嗜む程度に(コーラとかズームのような身近な株を
少し買ってみる等)
【投資の目的】
- 数年は資金ニーズがないので、
寝かせておくのがもったいないと感じるため
【お金に関する点 その他】
- 日中は金融とは離れた仕事のため、あまり企業分析に時間をさけな
いです。 - 実家は共にお金に困っていない、かつ通勤範囲にはあるため、
私か夫が亡くなる等の本当の万が一の時は、 助けてもらえるような状態です。 - 子どもは幼稚園、小学校受験は考えていませんので、しばらくお金
はかからなそうです - 今は全く未定ですが、いつか駐在帯同や出産で私が仕事を一時休む
可能性があります。
以上、携帯でバラバラと打ちまして、見にくくて恐縮です。
こういった相談をしたことがないので、
金融機関に相談に行くより、
宜しくお願いいたします。
ありがとうございます。
未明湖は素敵なところでしたね。北京大学の中国人学生が早朝から英英辞典を大声で暗唱していたことを思い出します。
回答
まず、以下の非課税制度を活用されていること、そして投資対象も含めて、とてもバランスが取れている印象を受けます。
- つみたてNISA(emaxis全米、全世界)
- iDeCo(同上)
- ジュニアNISA(同上)
また、以下も明記いただいています。拙著・弊ブログで述べたようなことが届いているのかなと思え、うれしく思います。
- 投資の目的
数年は資金ニーズがないので、寝かせておくのがもったいないと感じるため - お金を使いたい対象
:子どもの教育(高校あたりで一年くらい希望があれば留学させてあげたい)
:文化、教養取得(コロナ後は海外旅行や、美術館巡り、ミュージカル鑑賞等したいです)
:子どもが大きくなったら、その時のライフスタイルや社会情勢にあわせて、どこかに住居を買いたいです(未定、不動産市況による)
ポイント① 資産形成における切迫性
まず、上文を拝見する限り、一番大事なポイントとして、「資産形成における切迫性はない(たとえば、いつまでにセミリタイアしたい等)」とお見受けします。
焦る要素がないというのは、大きなアドバンテージです。
「お子様は中学まではお受験なし、子女の留学・住居取得などの大きなお金が必要な時期まで、いずれもまだ時間がある、または時期未定」ということですね。ですから、「この額をいつまでに必要なので増やしたい」といった差し迫った必要性はないと理解します。
であれば、すでに毎月20万円の積み立てをされていることもあり、追加的に多くの額を一度に投じる必要性は高くないと思います。過去の傾向から導き出した理論的な面だけを述べれば、最初期に一括投資をした方が、期待値としては高くなります。
ただし、未来は不透明であり、資産形成の切迫性がないのであれば、リスクを取りすぎる必要もまた、ないですね。まずは徐々に入れて市場と自分を様子見する形でよいと思います。
ポイント② 毎月20万円の積み立て
つみたてNISA・iDeCoを活用し、毎月20万円弱、年間216万円ほどの積み立てをされています。
既存制度をフルに有効活用されており、ここは設定額や投資対象などを変更する必要性は見当たらず、そのまま積み立て継続でよいと思います。
ポイント③ 企業分析など、投資にあまり時間を割けない
「企業分析など、投資にあまり時間を割けない」ということですから、個別株よりも投資信託・ETFが選択肢になると思います。
まずは保守的に一定額を投じ、自分と市場を様子見する
以上を踏まえますと、世帯年収も高いので、たとえば、
- 現金比率を少なくとも30~50%は確保した上で、まずは「①emaxis全世界、②VTI、③VYM」のいずれかに資金を徐々に投じてみる
- 現金3,000万円は温存しつつ、「毎月の世帯給与から支出を差し引いた分の半分」を毎月しばらく投じてみる
こういった行動が選択肢になると思います。数字は一例ですので、適宜変更いただいてもちろん構いません。
投資対象は、上に挙げた3つ(①~③)から選べば、現状においては、大きく外す必然性は見いだせないと考えられます。
まずは自分が思う保守的な額(これぐらいなら価格変動に耐えられるであろう額)を投じてみて、自分を客観視することが一案と思います。
客観視とは、たとえば、
- どの程度、自身の運用資金が上下したのか
- VTIやVYMから実際に分配金を得て、どう感じるのか
といった点は、自分なりに観測できそうですね。すると、なにかしら気づきや思うことがあるのではと推察します。
リスクの取りすぎには、くれぐれも注意
「違和感あれば修正し、心地よければ継続する」、これを自分なりに繰り返していくということですね。
リスクを取りすぎていると感じれば、現金比率を増やしましょう。「これぐらいのリスクなら取れるなぁ」と思えていれば、継続でよさそうですね。
ただし、あくまで相場がよい時というのは、気分が高揚し、自分が思っている以上にリスクを取りやすくなるものです。ここは、注意しすぎるほど注意してちょうどよいぐらいのポイントですね。資産形成に切迫性がないのであれば、なおのことと思います。
長期投資とは、なにを意味するか
ちなみに「どの程度、自身の運用資金が上下したのか」と述べましたが、以下も申し添えます。
そもそも投資に避ける時間は限定的でしょうから、逐次的に価格をチェックせずとも、たとえば月に1回、振り返る形でも全然よいと思います。

S&P500 長期チャート
そもそも長期投資をするということは、投資対象の長期的な成長に賭ける投資行動なので、その前提を覆すと予察できる事象がないかぎりは、毎日相場にかじりつく必要や、経済ニュースに一喜一憂する必要性は、高くないと考えられます。
まとめ
以上を振り返りますと、以下のような点に焦点を当てました。
- 資産形成における切迫性
- 既に積み立てている額(月20万円)
- 投資にかけられる時間
- 保守的な額を投じ、様子見する
- リスクの取りすぎには注意
- 長期投資が意味すること
投資の目的に記載されている通り、「現金で寝かせておくのはもったいない」というのは、おっしゃる通りです。
釈迦に説法とは思いますが、如才なきことながら念のため申し添えますと、「もったいない」という感情がもし先走りすぎると、それは過大なリスクを取る精神的要因になり得ることも、また事実と思います。現金は現金で、暴落の際に本当に頼りになるものでもあります。
あくまであせらずに、バランスよく、日常生活に支障をきたさない程度の意志力を割いて、継続していきたいところですね。
わかりにくい点があればご連絡ください。ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to you and your family.
全米株式と全世界株式、こちらの比較考察については、以下をご参考に供します。
過去から導出される長期投資の傾向については、こちらもご参考ください。
現金比率は、資産運用の根幹ともなる観点ですね。相場がよい時から調整局面に備えることが一案です。