「年間配当金>年間生活費」はFIREに明解な指標。どう機能させるか。リタイア後の投資戦略とは。
- 株式投資
- 生活設計
- 人生における判断
これらはいずれも、理論面・精神面の両面への配慮が必要だと思います。バランスが肝要ですね。
人生における判断の1つとして、人によっては「FIRE」にいつ踏み切るのか、が挙げられます。
よって、以下のような考えもあろうと思います。
「お金より時間が大事。資産(ストック)の多寡よりも、人生の決断(FIRE)に踏み切れる要素(配当というフロー)を速く積み上げ、自由な時間を得たい」
その意味で「年間配当金 > 年間生活費」は、FIREに向けてわかりやすい指標です。
ご質問
さて、以上を踏まえ、以下ご質問です。
題名: 「年間配当金>年間生活費」で配当金を積み上げていくKPIに救われました
メッセージ本文:
穂高様。はじめまして。
書籍で貴ブログを知り、とても感銘を受けました。
10年前に「100万円の豊かな節約生活」に感銘を受け、セミリタイアを目標に、インデックス投信と米国グロース株の積立長期保有をしてまいりました40代DINKSです。
自己資本と投資先企業の再投資分で現在価値を高めた方が、逐次配当よりも税金分のプレミアムがあると考え、結果として純資産も増えましたが、セミリタイアになかなか踏み切れず悶々としておりました。
これまでのKPIは、「年3%で運用し、生活費で5%を切り崩しても100歳までは持続可能な総資産額を達成。」
でしたので、インデックスとグロースのみですと、セミリタイア後のドローダウンによる純資産の目減りリスク(とドローダウンでの購入に備えたある程度の債券保有、売却のタイミング検討)へのストレスがリタイアへの心理的な足かせになっていました。
悶々としていたところ、貴ブログで、KPIを「年間配当金>年間生活費」で配当金を積み上げていくというシンプルな目標を知り、救われた気持ちになりました。おかげさまで、セミリタイアに向けて動いていけそうです。
徐々に配当株の割合を増やしていきたいと考えています。ありがとうございます。
ご質問ですが、米国高配当企業の場合、「米国配当税10%」と「日本配当税20%」の二重課税が気になりました。(私は、特定口座とNISA運用で、確定申告経験はなしです)
米国ADR(英国や豪州や香港)でNISAだと配当が無税になりますが、
- NISA枠では、ADR、米国高配当株、日本REITや高配当株がよいのか、
→ 上記目的の場合、米国高配当株ETF【VYM】が一案です。 - 非NISA枠では、同じくどれがよいのか。
→ 同上。 - 不動産投資家と同じように、資産管理会社を設立して生活費を経費計上して確定申告したほうがよいのか。
→ 配当以外に事業・不動産などの売上が継続的に立つ場合は、要検討と思います。 - リタイア後は、高配当と好配当、REITや現物株、現金で、どのようなアセットアロケーションを組めばリスク分散されると思っているのか、
→ キャッシュフロー構成がポイントです。
よろしければ、穂高様の考えを聞かせていただけないでしょうか?
よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
インデックス・グロースで資産形成した場合、そこから
- 取り崩しにするのか
- 配当目的の投資へ移行するのか
というのが、主な選択肢と思います。
ご質問者さまは、後者にしたいということですね。
移行には税金や手数料コストも生じますが、人生の決断においてはさしたる差は生じないと私も思います。
回答
背景・目的は以下の通りと理解しました。
- インデックスとグロースで資産形成してきたが、セミリタイア後のドローダウンリスク(とドローダウンでの購入に備えたある程度の債券保有、売却のタイミング検討)へのストレスがリタイアへの心理的な足かせになっていた
- 今後は「年間配当金 > 年間生活費」で配当金を積み上げ、セミリタイアへ踏み切りたい
また、40代というご年齢・ご質問文から「近い将来に比較的多く配当を得たい」と理解しました。
では、4つのご質問について、順次記します。
① NISA枠では、ADR・米国高配当株・J-REIT・日本高配当株のどれがよいか
近い将来に配当を比較的多く得たい場合、米国高配当株ETF【VYM】が一案です。高配当株ETFの中では、最もバランスが取れています。
投資が趣味化していない限りは、基本的に個別株よりETF・投資信託を推します。
米国高配当株ETFには、主に「VYM」「HDV」「SPYD」があります。
分配利回りはSPYDが一番高いです。安定感・増配はVYMが光ります。
- 近い将来の配当の多さを追求したければ、SPYDが一案。ただし、株価の変動率は高めです。
- 近い将来の配当を比較的多く得られて、安定感・増配などを求めたい場合は、VYMが一案です。
② 非NISA枠は、どれがよいか
①と同様です。
③ 不動産投資家と同じように、法人設立したほうがよいか。
「”一定以上の規模で” 毎年売上が継続的に立つ事業の有無」がポイントと理解しています。
たとえば、配当所得以外に事業所得・不動産所得などで売上が毎年ある程度立つ場合は法人化を要検討と思います。
逆に、配当所得のみですと、法人化のメリットはあまり見いだせないと理解します。
なお、「”一定以上の規模で“」とは、具体的には「法人関連諸費用 < 法人としての税効果」を満たす規模、です。
④ リタイア後のリスク分散。高配当・好配当・REIT・現物株・現金のアロケーションとは。
「リタイア後のキャッシュフロー構成」がポイントと思います。
- 事業所得
- 配当所得
- 不動産所得
などの所得が複数あるかが要素になると思います。
※なお、「取り崩しではなく配当で」というご質問の趣旨・前提に沿って以下回答します。
★ 配当所得で生活費をまかなう場合
以下が一案です。
- 現金:20~50%など
- 株式:高配当株ETF(・REIT)
現金比率はリスク許容度・資産額・生活費次第なので、あくまで数字は一例です。
ただ、いずれにしても配当所得がキャッシュフローの柱である場合、ある程度は配当を求めていくことになろうかと思います。ゆえに高配当株ETF(・REIT)としています。
★ 「配当所得以外でも生活費をまかなえる」「配当が生活費を大きく上回る」場合
以下が一案です。
- 現金:10~50%など
- 株式:好配当株(VIG)や、VOOなど
こちらも、現金比率はリスク許容度・資産額・生活費次第なので、あくまで数字は一例です。
配当以外で生活費がまかなえていれば、「近い将来に多くの配当を求める」必要性自体は下がります。
その場合、高配当株ETF以外にも、低配当でも増配率が高いような好配当株・増配株も選択肢に入ってきます。ETFは【VIG】が該当します。増配率の高さではVYMの方が直近10年では高く、VYMも一案です。
まとめ
まとめます。
セミリタイアをめざす戦略
理論的には、「インデックスファンドを積み上げて、取り崩し」も、もちろんアリです。ただし、まさに今回のご質問者さまのように「取り崩しのストレスがリタイアへ踏み切る足かせ」となることもありますね。
その場合、配当を積み上げて、「セミリタイアに踏み切る際の明解な指標」として機能させる高配当株ETFが現状に適した解と思います。
セミリタイア後の投資戦略
セミリタイア後の投資戦略については、
- 収入構成
- 支出水準
- リスク許容度
などによって千差万別ながら、「配当以外で生活費をまかなえるか」「配当が生活費を大きく上回るか」が大きなポイントと思います。
以上が回答となります。ご質問、ならびに拙著お読みいただき誠にありがとうございました。ご参考になれば幸いです。
Best wishes to everyone.
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