【SPYD深堀】SPYDをポートフォリオのコアとする際の懸念材料とは。

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今回のコロナショックで半値以下となった局面も見られた、米国高配当株ETF「SPYD」のご質問について、以下回答申し上げます。

【高配当株ETF】SPYDをポートフォリオのコアに据える際の懸念材料とは。

ご質問

題名: SPYDの今後について

メッセージ本文:
いつもブログを拝見いたしております。50才代半ばの非正規職員です。

パート勤めの妻とこども2人です。40才の頃体調を崩し、会社を辞め、以後非正規職員です。

退職金のあてもなく、年金機構から年に1回届く年金定期便には、65才から受け取る予定の年金が年間約150万円と記載されており、これではいかん、と焦り、3年ほど前から米国株を中心に投資を始めました。

巷ではS&P500が王道と言われておりますが、自分がリタイヤする頃に今回のような暴落が来たらどうしようかと思うと、高配当戦略に魅力を感じます。

MOやBTIなどの個別銘柄も少しづつは保有しておりますが、安定感からVYMを中心に少しづつ積み立てております。しかし、リタイヤまでの年数も少なくなりつつあり、今後はSPYDをコアに(ポートフォリオの半分くらい)積み立てていこうかどうか迷っています。

今回のコロナショックでSPYDの価格は半分以下に下がり、巷ではSPYDに対する評判があまりよくないように思います。

しかし、いくら含み損を抱えていようとも、累積受取配当金を目標にするならば、VYMよりもSPYDの方が効率がいいと思うのです。

今後、SPYDをコアにすることに関して何か懸念材料はありますでしょうか?三菱サラリーマンさんのお考えをお聞かせいただければ幸いです。

ありがとうございます。

50歳半ばということで、まず、債券をトッピングすることが有力な選択肢になってきます。

なぜなら、投資期間が10数年の場合、つみたて投資の際に、含み損を抱えたまま投資を終えてしまう可能性が応分に高くなるからです。(基本的に投資期間が長いほど、元本割れリスクが下がる傾向にあるのが株式投資です。以下記事も併せてご参照ください。)

そして、おっしゃる通り、「高配当株ETFの株数を減らさずに資本を取り崩していく戦略」が一案です(ちなみに、S&P500連動のETFを取り崩す形も一案です)。そこで、「SPYDをコアとする際の懸念材料とは?」ということですね。

SPYDの懸念材料を考える上での注意点

SPYDは、設定日が2015年と日が浅く、暴落時のデータがVYMより限定的でした。そこで今回「コロナショックで大きく下落した」というのが時系列的なお話になります。

SPYDが「巷での評判がよくない」という事象を私は存じ上げませんでしたが、直近の相場において下落率が高かったことから、そういった評判となるのは想像に難くありません

なぜなら、人間は概して、「最も直近の事象における印象が強く残る」ものであり、「センセーショナルな部分に着目しがちである」からです。ましてや下落率が高い投資対象はある意味で恐怖心・注意を引きやすい情報ですね。

まず評判というのは、必然的に過去の事象に対する考察から派生します。そして、未来は不明です。なので、私は投資対象の「評判」について思考を割くことはしておりません。むしろ「百害あって一利なし」とすら思っています。中立的な観点でない見解には、要注意です。

重要なのは、粛々と自分の投資シナリオに沿って歩を進めることですね。

今回のコロナショックから見える、SPYDの ”傾向”

以上を踏まえた上で、SPYDの懸念材料について記させていただきますね。

  • SPYDの下落率が高かった=ボラティリティが高い可能性
  • SPYDの下落率が高かった=今後の下落局面も大きく下げる可能性
  • SPYDの下落率が高かった=今後の上昇率も高い可能性
  • SPYDの下落率が高かった=下落局面で仕込めば反発時に良好なリターンを生む可能性

このように、たとえば論理展開としては少なくとも上述4つのパターンが解釈可能です。これら解釈を「個人的にどう捉えるか」が重要になってきます。

なぜ「可能性」と記したかと言うと、特に今回は下落局面とひとくちに言っても、原油価格・ハイイールド債の動きなど特徴的であり、次の下落局面で同じ動きをするとは限らないからです。ゆえに1つの「傾向」としてとらえる形が適切と思います。

ちなみに、「ボラティリティが高い」ということは、良い面も悪い面もあります。上昇局面では良い面が表出し得るものですし、下落局面では悪い面が表出し得るものです。どちらかだけに焦点を当てるのは中立的な観点にはならないと考えます。

言えること①:SPYDは、ボラティリティが高いという前提を置くと、下落局面で精神面への配慮に懸念

ここから1つ言えることは、仮にボラティリティが今後も高いという前提を置くと、「下落局面で精神面に配慮するという観点」からは、SPYDは向いていないということになります。

なぜなら、下落局面で底堅い動きを見せるETFの方が、心理的には楽だからですね。

言えること②:SPYDは、やや中上級者向けの可能性

また、その仮説に則った場合、「SPYDはやや中上級者向け」という論理展開も可能です。

なぜなら、ボラティリティが高い投資対象は、ハイリスクハイリターンとなる傾向があるからですね。購入タイミングによる振れ幅が大きくなるからです。

つまり、「良いか悪いか」という観点で見るのではなく、「特徴や傾向をどう捉えるのか」が本質的に重要な点だと思います。「SPYDの下落率が高かった=よくない」という結論を導出するのは片面的に見えてしまいます。多面的な観点では、そのような結論は導出できません。

まとめ

つまり、現時点での流れから整理すると以下となります。

  • SPYDは、「中上級者向けの可能性あり」
  • SPYDは、「下落局面で精神面に配慮する観点からは、VYM・HDVより向いていない可能性あり」
  • SPYDは、「ボラティリティが高い前提下、購入タイミングによる影響が大きくなり得る」

こういった整理・論理展開が可能です。ポートフォリオの一部をSPYDにするのであれば、それほど気にすることはありませんが、コアにする場合、やはり上述事項はおさえる必要があると思います。

以上が、SPYDをコアとする際の懸念材料・特徴です。重要なのは、特定の局面、短期的な値動きのみで、性急に結論を出すのは不味と思います。言い換えれば、そういった情報には、注意を払う必要がありますよね。

以前は投資メディア・ブログも限定的でしたが、今や情報が溢れています。そのような状況では、情報の取捨選択を意識したいところです。「巷の評判」というおぼろげなものは、あまり気になさる必要はないと思います(ご質問者さまは評判を踏まえた上でご自身のご意見をお持ちですし、釈迦に説法にて大変恐縮です)。

ちなみに

>累積受取配当金を目標にするならば、VYMよりもSPYDの方が効率がいいと思う

と記載頂いています。如才なきことながら、念のため注意点を申し添えておきます。

  • 受取配当金を目標とすることは合理性があります。ただし、配当金の性質を理解しておく必要があります。
  • 配当金の性質とは「それ自体に価値がある」とか「打ち出の小槌」というよりは、「株主に帰属する資本の払い戻し」です。要は、「自分の財布から別の自分の財布に資本を移転させているだけ」とも言えます。
  • 「配当金を最大化するにはSPYDの方が効率が良い」のは仰る通りなので、配当の上記性質をご理解の上であれば、そういった戦略も1つの形です。

ご質問、誠にありがとうございました。以上、ご参考になりましたら幸いです。

Best wishes to everyone!

記事中に触れた関連記事を以下再掲しておきます。

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公開日:2020年4月11日