【MO】アルトリア・グループ、2019年4Q・通期決算まとめ
米たばこ大手の2019年第4四半期決算が発表されました。結果はまちまちです。
- キャッシュフロー堅調
- 調整後EPS成長維持を確認、2020年以降も成長継続との会社想定
- 3Qに続きJUUL減損、会計上EPS大幅悪化
- 2020年通期ガイダンス小幅引き下げ
決算内容(2019年4Q、通期)
4Q単独および通期の概要は下表の通りです。
2019年4Q | 実績 | 予想 | 前年同期比 |
売上高 | $4.8B | $4.89B | +0.3% |
調整後EPS | $1.02 | $1.02 | +7.4% |
EPS | -$1.00 | -100%+ |
2019年通期 | 実績 | 前年同期比 |
売上高 | $16.7B | +0.7% |
調整後EPS | $4.22 | +5.8% |
EPS | -$0.70 | -100%+ |
- 調整後EPSは3Q時点ガイダンスで会社予想「$4.19-$4.27」のところ、$4.22に着地。
- 会計上EPSは前年比で大幅悪化。後述する「特殊要因である減損影響」を反映しています。
IQOS(アイコス)
IQOSがアトランタ・ジョージア・リッチモンドなどで商用化スタート。
コスト削減プログラム
2018年度末に発表された2019年のコスト削減プログラムは、6億ドル。目標の5.7億ドル上回って着地。
★JUUL関連、減損損失を計上
- JUUL出資関連で、3Qに続き41億ドルの減損損失を計上。
- 原因は「JUULに対する訴訟費用の増大を見据えた」との由。
これで3Qに計上した46億ドルと合わせて87億ドル(=約9,600億円)の減損を計上した形。
JUULへの出資は128億ドル規模であり、当初見込んだ価値は大きく毀損されたことになります。
つまり、出資総額の2/3相当額を、「当初見込んだ収益や価値が得られないと判断し、簿価を切り下げる」減損を認識した形となります。
結果的にアルトリアグループのJUULへの出資は、最悪のタイミングで実施されたことになります。
この減損はキャッシュアウト(現金支出)を伴いません。では、どこに転化したかと言えば、債務増加です。
アルトリアは2018年にJUUL出資用に短期借入金として同額を借り入れ、翌年に長期債務として借り換えを行っており、当該勘定項目が増大したことになります。
キャッシュアウトを伴わないことから、財務指標では2018年度から大きな変化はありません。2019年通年を終えた時点で、「Net Debt / EBITDA=2.3」と2018年度末と同等の水準です。
2020年度以降の見通し
次に、アルトリア・グループの「今後における主要トピック」である以下4点を確認します。
- 配当政策
- 自社株買い
- 調整後EPS成長目標(2020~2022年)
- 通年ガイダンス(2020年)
配当政策
- 調整後EPSベースで配当性向80%目標を維持(2020-2022年)
自社株買い
- 2019年に8.4億ドルの自社株買い実施
- 2019年末時点で、10億ドルの自社株買いプログラムのうち残枠5億ドル。2020年末までに、市場状況等に応じたタイミングで実施予定。
過去自社株買い推移
過去の自社株買い規模の推移を、下表の通り載せておきます。
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | |
自社株買い | 5.5 | 10.3 | 29.1 | 16.7 | 8.4 |
(単位:億ドル)
アルトリア・グループは、過去5年で年間5.5億~29億ドルの自社株買いを実施していることから、2020年の自社株買いは、過去推移の観点からは、その下限あたりの規模です。
調整後EPS成長目標(2020~2022年)
- 調整後EPS成長目標を下方修正 5~8% → 4~7%
下方修正の原因として、「JUULへの投資による収益が得られないと想定したため」としています。
現実に即した形の修正であり、納得です。
通年ガイダンス(2020年)
- 調整後EPS:$4.39~$4.51(=前年比+4~7%、2019年実績$4.22)
- たばこ産業の国内売上本数:前年比-4~6%
売上本数減の一因として「政府規制により、たばこ購入年齢下限が21歳に引き上げられた」ことを挙げています。
引続き「+4~7%成長」を明記と依然強気です。配当性向80%維持見通しから、当該シナリオ維持であれば、増配率も同程度に着地と想定します。
キャッシュフロー
- フリーキャッシュフローは2018年に続き高水準を維持
- 自社株買いは継続
- 配当性向(FCFベース)は、調整後EPSベースと同じく80%
- 2019年に債務36億ドル増加
【MO】アルトリアグループ2019年4Q決算まとめ
キャッシュフローやMarlboroのシェアなどについては、大きな変化は見られません。調整後EPS成長見通し・売上本数下落の見通しも大きな変化はありません。
以下項目を個人的に注目しています。
- 紙巻きたばこで値上げによる収益維持がどこまで可能なのか
- IQOSによる今後の寄与具合
通期での減損額自体は煽情的ながら、そもそも3Q決算で既に45億ドル計上されています。当時の市場は3Q決算発表前から減損自体は観測されており、焦点は減損金額自体という形でした。
減損はネガティブです。ただし、キャッシュアウトを伴わず、債務という形で財務面では先送りの性質に近いです。その性質は、Net Debt / EBITDAにも表れています。同数値は前年比で同水準です。
「客観的に時系列ならびに財務やキャッシュフロー等を見ておきたい」と改めて感じる決算でした。総括すると、私は悪くない決算だと思います。
Best wishes to everyone.
2019年3Q決算は以下にまとめています。
アルトリアグループの分析記事です。