【注意】2019年の米国株上昇は、EPS増加ではなくPER上昇が要因

Twitter

年始当時の本記事内容(特に最下段)を見直すと、「バリュエーションの修正+α 多数」という見方もできそうです。やはりバリュエーションが元々高かったことは改めて認識しておきたいですね。

2019年の米国株は、配当含むトータルリターンが31.5%という非常に高水準なリターンを示した1年でした。

その興味深い関連情報として、JPモルガンアセットマネジメントの資料をもとに、以下ご紹介します。

【米国株】2019年の株価上昇は、EPS増加ではなくPER上昇が要因

株価上昇の要因・内訳を解するべく「リターンの項目別寄与度」を今回、参照します。

リターンの項目別寄与度とは、リターンを以下3つの要素に分解し、リターン要因(どの要素がリターンに寄与したか)を探る際に参考になります。

  1. 受取配当および再投資の効果
  2. バリュエーション(PER・株価収益率)の拡大
  3. 向こう12ヵ月予想業績(EPS・1株利益)の増加

各国株式リターンの項目別寄与度(2018年・2019年)

下図は「2018年・2019年における各国株式リターンの項目別寄与度」を表したものです。

2018年 米国 日本 欧州 新興国 アジア
配当および再投資 +1.9% +1.8% +3.1% +2.4% +2.3%
PER -25.3% -26.7% -22.1% -14.8% -13.4%
EPS +19.1% +8.9% +8.7% -1.9% -2.9%
トータルリターン -4.4% -16.0% -10.3% -14.2% -14.1%

2019年 米国 日本 欧州 新興国 アジア
配当および再投資 +2.6% +2.9% +4.7% +3.5% +3.2%
PER +25.9% +24.5% +23.4% +20.4% +20.1%
EPS +3.0% -9.3% -0.6% -5.0% -4.8%
トータルリターン +31.5% +18.1% +27.4% +18.9% +18.5%

上記数値から以下事項が読み取れます。

  1. 各地域「米国・日本・欧州・新興国・アジア(日本除く)」の傾向は類似
  2. 米国株のリターンが最良

貿易など実需を伴う世界経済が密接に関係している現代では、株価は程度の差はあれど動きや傾向としてはやはり似ています。

また、国・地域別では米国株が他地域を圧倒しています。

米国株リターンの項目別寄与度(2018年・2019年)

ではここから、リターン最良であった米国株に絞ります。値は下表の通りで、そこから下段事項が読み取れます。

米国株 2018年 2019年
配当および再投資 +1.9% +2.6%
PER -25.3% +25.9%
EPS +19.1% +3.0%
トータルリターン -4.4% +31.5%

  1. 2019年の株価上昇は「1株利益(EPS)の成長に伴ったもの」ではなく、「バリュエーションの上昇によるもの
  2. とはいえ2年間で見ると、「PERは2018年に大幅下落、2019年に大幅上昇した」ことから、2年という期間ではバリュエーション横ばい

2018年でPERが大きく下落する一方、2019年大きく上昇しています。2年間で見ると相殺し合ってバリュエーションの拡大はほぼなしという形になります。

これは、2019年のリターンが、2018年末における下落による「発射台の低さ」を象徴する面でもありますね。

株式価値の主要な源泉は利益であることから、利益成長に伴った株価上昇は、投資家にとって心地よい株価上昇といえます。

一方で、利益成長が伴わない「バリュエーション独歩高」の株価上昇は、いずれ「バリュエーション修正」という形で株価下落としての表出が想定されることから、手放しで喜べず、バブルの予兆であり憂慮しておきたい事象です。

2019年、米国株上昇要因まとめ

以下再掲します。

2018年 米国 日本 欧州 新興国 アジア
配当および再投資 +1.9% +1.8% +3.1% +2.4% +2.3%
PER -25.3% -26.7% -22.1% -14.8% -13.4%
EPS +19.1% +8.9% +8.7% -1.9% -2.9%
トータルリターン -4.4% -16.0% -10.3% -14.2% -14.1%
2019年 米国 日本 欧州 新興国 アジア
配当および再投資 +2.6% +2.9% +4.7% +3.5% +3.2%
PER +25.9% +24.5% +23.4% +20.4% +20.1%
EPS +3.0% -9.3% -0.6% -5.0% -4.8%
トータルリターン +31.5% +18.1% +27.4% +18.9% +18.5%
  1. 「米国・日本・欧州・新興国・アジア(日本除く)」の各地域とも傾向相似
  2. 米国株リターンが最良
  3. 2019年の株価上昇は「1株利益(EPS)の成長に伴ったもの」ではなく、「バリュエーションの上昇によるもの
  4. とはいえ2年間で見ると、「PERは2018年に大幅下落、2019年に大幅上昇した」ことから、2年という期間ではバリュエーション横ばい

株価上昇に伴い資産が拡大すると、気分も高揚しがちながら、その株価上昇が、利益成長の伴ったものなのか、その点は冷静に見たいところです。

尚、下図は予想利益ベースの各国PERです。尚、PERは万能指標ではありませんが、1つの参考尺度にはなります。

2019年末の各国PERは、米国株が約18倍と他地域と比べ割高感が見られ、過去15年平均の14.8倍より高い値です。

2017年後半には丁度この水準からバリュエーションの修正(≒株価下落)が起きており、2019年末時点で既にその水準に達しているのが、PERの観点から見た直近状況です

Best wishes to everyone!

リフィニティブ予想の2020年の米国企業業績は、堅調の見通しです。しかしこれは予想であり、のちに修正されることもありますから、その点は留意必要です。

米国企業業績、2020年に2桁増益予想と依然堅調見通し
2019年10月リフィニティブの発表によれば、米企業業績が2020年に入り依然堅調。具体的には2020年において+11.1%と2桁の増益見通...

新刊「#シンFIRE論 経済・精神の自由を手に入れる主体的思考法」
騒がしすぎる世界で、「主体的」であれ
スポンサーリンク

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

外国株式ブログランキング

Follow me by FREETONSHA

公開日:2020年1月12日

コメント

  1. 豚19号 より:

    三菱サラリーマン様

    お世話になっております。
    昨年10月上旬より貴ブログに感銘を受け投資・経済学の関連図書を読み漁っておりました。
    また現在、新卒3年目で三菱系列で働いており勝手に親近感を抱いております。

    【本題】
    新型コロナが原因による原油安・リスクオフの流れで
    ようやく株価が調整段階に入ったと感じております。

    そこで
    (1)貯金70%をドルコスト平均法で1年間かけてSPYD(80%)、VYM(20%)に投資
    (2)副業収入&給与&賞与の8割を株式投資に回す
    (3)積立NISAでeMAXIS slim 全米株式に積立を開始
    を本日より開始したいと考えております。

    ※本来なら”十分な安全マージンを確保”or”チャートを分析し底値の反発”
     のタイミングで投資するべきですが、
     先行きが不透明&新型コロナ収束による株価暴騰の機会損失を防ぐため、
     上記(1)〜(3)を実施します。

    今後は心地の良いアセットアロケーションを模索しながら
    コツコツ継続して行きたいと思います(^^)

    新型コロナウィルスの収束はまだ少し先になりそうですが、
    三菱サラリーマン様もどうかご自愛下さい。