米航空機大手ボーイングの銘柄分析です。現在保有していませんが、いずれはポートフォリオに加えたい銘柄です。
ボーイングの特長は以下通り。
▶参入障壁が高いと思しき事業(航空・防衛・宇宙)
▶継続的に多い受注残
▶米政府を通した太い受注
ハンティントン(HII)は主に艦船など海上関連を担いますが、空を司るのがこのボーイング(BA)です。
特に米政府から半ば言い値での購買ではないかとも思える「F15」など航空自衛隊へ戦闘機を製造・納入するのも、このボーイングです。
こういう形で国富が流出した一部を、流出先の企業の株主となれば、その一部を日本国内に還流してもらうことにもなります。
【BA銘柄分析】ボーイング、30年間減配なし、高い増配率を誇る好配当企業
ボーイングは1916年に設立の、世界最大の航空宇宙企業です。
主に以下3つのセグメントとファイナンスを担うBoeing Capitalを加えた4つのセグメントがあります。
①商用航空機(Commercial Airplanes)
ー旅客機・貨物機の製造・保守。ボーイング737MAXは同セグメントに含まれます。
②防衛 / 宇宙 / セキュリティ(Defense, Space & Security)
ー有人・無人軍用機、武器、ミサイル防衛システム、官用・商用衛星などの開発・製造、宇宙探査。航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15も同セグメントに含まれます。
③グローバルサービス(Global Service)
上述2セグメントにおけるメンテナンス、システム関連、アップグレード
目下最大のトピックとして挙げられるのが、ボーイング737MAXにおける飛行トラブルです。
▶2018年10月、ライオン・エア墜落事故ー離陸後約10分で墜落、乗客乗員189名全員が死亡
▶2019年3月、エチオピア航空墜落事故ー離陸後約6分で墜落、乗客乗員157名全員が死亡
▶同月、アメリカ連邦航空局(FAA)は飛行禁止措置
▶のちにボーイングのCEOは、システムの誤動作を認める発言、および謝罪。
▶ノルウェー・中国の航空会社は、補償を請求。
▶︎CEO交代
同報を受け、各国「運用停止→納入停止→生産停止」という具合に、ボーイングの主力製品である737MAXは、後述の通り在庫として積み上がり、更に生産停止という状況。
米当局FAAから「年内飛行再開は無理」との判断がなされ、機体の安全性検証には更に時間がかかることが予想されます。
その間も運用・納入・生産は停止となるであろうことから、来年も厳しい決算が予想されます。
更に、同事故の背景には皮肉にも、行き過ぎた利潤追求主義があったともされ、非常に難しいというか根の深いというか、capitalism自身が抱える問題が人命を奪ったとなると、御しがたい結果です。
【BA】株価・配当利回りの推移
過去5年間の株価と配当利回り推移です。平均配当利回りは2.59%です。直近2019年12月24日と近い値。
購入の際は、ボーイングのキャッシュフロー悪化は今年だけでなく来年も続きそうなことに留意しておきたいです。
【BA】配当の推移
下図は上からボーイング社の株価・配当・配当利回りの順に表したものです。
30年間減配なく、過去5年間の増配率は年率平均28.6%と高水準です。
ただし、2019年は増配なしの配当据え置きとなっており、来年も増配はあまり見込めないと思わせる足もとキャッシュフローです。
【BA】売上高・営業利益・純利益
ボーイング(BA)の①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージンを見てみましょう。
営業CFマージンに加え、売上高も右肩上がりです。主因に商用航空機部門の納入増を背景とした好調さがあります。
2006年に商用航空機の398機だった年間納入数は、2018年には倍以上の806機まで伸長。ただし2019年・2020年は737MAXの納入停止により、大きく落ち込むことは確実と思います。
【BA】セグメント別売上高
ボーイングのセグメント別売上高は以下の通り。
2019年に入り、主力製品ボーイング737MAXが属する商用機部門が3Q時点で4割減(409億ドル→247億ドル)と飛行トラブル問題が大きく影響しています。
3Q時点における商用機部門の大幅減の主因は、米国における商用機部門売上は前年同期比横ばいも、「中国・欧州における売上が半減したこと」、更に「56億ドルが737MAX問題の潜在的な損失見積として計上されていること」が挙げられます。
一方、「防衛・宇宙・セキュリティ」および「グローバルサービス」セグメントは、安定。
【BA】セグメント別利益
ボーイングのセグメント別利益は以下の通り。
「グローバルサービス」セグメントは、売上と同じく利益も安定する一方、絶好調だった商用機部門が大幅に落ち込み、赤字。先述の56億ドルの損失見込みと納入減が響く格好。
【BA】理想的なキャッシュフローも、2019年に一転赤字
下図は、ボーイングの①営業キャッシュフロー・②投資キャッシュフロー・③フリーキャッシュフロー・④配当支払額の推移です。
2018年までは素晴らしく綺麗なキャッシュフローです、フリーキャッシュフローは綺麗な右肩上がりを描き、配当支払い額を大きく上回り、理想的な状態でした。
ただし、2019年に状況は一変。2019年3Q時点で営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローともに赤字です。
2018年・2019年のボーイング737MAXにおける墜落事故・納入停止以降、在庫が急増。2019年3Q時点で95億ドル分の在庫増が営業キャッシュフロー減として影響し、営業CFは赤字という足もと非常に厳しい状況。
【BA】配当性向(FCFベース)
下図は、ボーイングのフリーキャッシュフローベースでの配当性向の推移です。
2018年まで増配率20%という増配が続くも、配当性向は30%近傍で安定するという理想的な状態でした。
しかし、2019年は3Q時点でFCF16億ドルの赤字、配当性向もマイナスに転落しています。
【BA】ボーイング銘柄分析まとめ
以上、ボーイングの銘柄分析を行いましたが、やはり最大の焦点は「主力製品737MAXの運航・納入・生産再開がいつになるのか」と思います。
主力セグメントはあくまで売上・利益ともに全体の6割を占める商用航空機であり、中でも主力製品の737MAXの動向が注目の的。
ただしFAAによる安全性の検証が直ちに終わるかは不透明であり、「2020年も依然として低調なキャッシュフロー、2年連続の増配なし」という状況も覚悟しておいた方が良さそうです。
一方、同社の手掛ける事業自体は、すぐに代替可能な企業が現れるかは大いに疑義あり、競争力自体は引続き高く維持すると期待させる内容です。
バリュエーション次第ながら、仮に大きく売り込まれる状況となれば迷わず買いたい銘柄ではあります。
Best wishes to everyone!
空がボーイングなら、海はこのハンティントンです。独占・寡占事業を持つことが最大の魅力です。
ボーイングのように絶好調だった企業でも、このように予見不可能な事象で大きく調整しました。集中投資はメリット・デメリット両面ありますが、今回の事故はそのデメリット部分が表出した格好です。