【PFF】iシェアーズ米国優先株式ETFへ投資して感じた6つの特徴・注意点・活用法
見出し「2024年 利下げを織り込む局面」を追記しました
【PFF】iシェアーズ米国優先株式ETFは、2016年から4年にわたり投資していた高配当ETFです。多い時には700万円ほど投じ、月3万円の配当を得ていました。2024年9月から少しずつまた買い始めています。背景は「2024年 利下げを織り込む局面」の部分に記しています。
優先株式とは、議決権がない代わりに、普通株より配当がよいものです。債券に近い値動きで、平時は値動き小さく、金融不安には弱い傾向があります。
では実際にPFFへ投資して感じた特徴・注意点・活用法をまとめます。現時点で以下の特徴がみられます。
- 高配当で毎月分配(再投資効率は四半期配当と同じ)
- リーマンショックでは、大きく下落(金融不安に弱い)
- コロナショックでは、市場平均より底堅い(金融不安に至らず)
- 弱気相場では、信用収縮(金融不安)なければ一定の底堅さ
- 金利上昇局面(2022年)で株式・債券と同様に弱い
- 株価の右肩上がりは見込みづらい
以上の特徴を踏まえると、以下活用法が想定できます。
- 平時のインカム目的での分散先(たとえば上限10%)
- (特に信用収縮を伴う)弱気相場で大きく下げた時にインカム目的で購入
特徴を、順に詳述します。
①:高配当で毎月分配、再投資効率は四半期配当と同じ
PFFに投資すれば、簡便に優先株式に分散投資が可能ですね。高配当で毎月キャッシュフローを得ることができます。
一方、毎月配当自体は、再投資における効率という観点からは四半期配当と差異はなく中立的です。その点は留意しておかれてもよいかと思います。
②:リーマンショックでは、株価はしっかり半値以下に暴落
- 高値:50.38ドル(2007/4/10)
- 安値:15.05ドル(2009/3/6)
70%の暴落です(ただし、設定直後にリーマンショックとなったため、やや割り引く必要あり)。
債券に似た性質がある優先株式ですが、金融危機の際は株式と同様に暴落する一例となりました。
③:コロナショックでは、市場平均より底堅い
一方、コロナショックでは、やや底堅い動きを見せました。

2020年 1~12月
青:PFF 赤:S&P500
下落率(月間) | |
---|---|
PFF | -16.20% |
S&P500 | -19.63% |
PFFの方が、S&P500よりも底堅い動きでした。理由は後述しますが、信用収縮(=金融不安)を伴わなかったことが挙げられます。
④:弱気相場では信用収縮に至らなければ、底堅さ見られる
リーマンショックでしっかり暴落した過去があるため、弱気相場でも弱いイメージだったPFF。
しかし保有していて感じたのは「金融危機でない限り、PFFは底堅さがみられる」という傾向です。

水色:S&P500 青色:PFF(配当含まず)
上図の通り、2018・2019年の下押し局面(赤枠で囲った部分)で、S&P500が10~20%下落する中、PFFの下げ方は限定的です。
ゆえに、やや玄人向けですが金融危機・クレジットリスク(信用不安)が懸念されていない弱気相場においては、PFFから値下がりの激しい株式に乗り換えて、リバランスとして活用するのも一案です。
コロナショックでの特徴的な動き:信用収縮の有無で左右
リーマンショックで暴落したことから、脆弱な面がみられるPFF。
ただし、「下落に対してなんでもかんでも弱いということではなく、信用収縮を伴った下落でなければ、下げ幅は限定的な例」が見られました。(ただし、サンプルは今回含めて4回と限定的なため、確度は一定程度にすぎないことに注意)
2020年2月末~3月初旬における下落局面開始直後は、下図の通り【VOO】【VYM】より下げ幅は限定的で反発も早かったです。
PFF:青 VYM:赤 VOO:紫
2022年2月末時点では、ハイイールド債が売られるなどパニック的な面が見られ、国債とのスプレッドは拡大傾向も、実体経済における信用収縮は当時顕在化していませんでした。
しかし3月中旬からPFFは急落。この時期は、「CP(コマーシャルペーパー)・社債市場などで流動性低下・資金調達環境の悪化(=金融不安)」が見られ始め、FRBも「金融緩和というよりも流動性の下支えを目的とした流動性供給」に踏み切った前後でした。
当時の急落には、このような背景もあると見ています。
2023年3月中旬のいま、まさに似た状況ですね。銀行で流動性低下・資金調達環境が悪化し、FRBが流動性供給に踏み切っています。
⑤:金利上昇局面では、株式・債券と同様に弱い
2022年 利上げ局面

出所:Bloomberg
上図は、利上げ局面(2022年1月~2023年1月)における、PFFと「米国株(VOO)」「米国債券(AGG)」の株価推移です。
PFFは、米国債券と同様の値動きであったことがわかります。金利上昇局面で債券は弱い傾向があります。優先株は債券に似た性質を持つため、PFFも債券と同様に、金利上昇局面で弱い傾向が読み取れます。
2024年 利下げを織り込む局面

出所:TradingView
上図は「PFFの株価」と「FFレート(米政策金利)」ですが、リーマンショックやコロナショックに加えて、FFレートが上昇(米利上げ)したときにPFFの株価が下がっていることがわかります。2024年9月時点では今後利下げが見込まれる状態なので、(景気後退や金融危機等のリスク回避局面がなければ)PFFの株価上昇を見込めると思います。
ただし米利下げは日米金利差縮小要因となるため、円高リスクあり
⑥:高配当も、株価の右肩上がりは見込みづらい
下図は、PFFの「株価」と「配当」の推移です。
株価
配当:金利低下で減り、金利上昇で増える
株価
- 平時は横ばい、値動き極小
- リーマンショック・チャイナショック・コロナショックのいずれの後も、直前水準に回復
配当
- 傾向:金利上昇局面で増加、金利低下局面で減少
トータルリターン(2011~21年)
PFF | SPY | QQQ |
---|---|---|
+88.8% | +359.1% | +713.2% |
高配当ゆえに、株価横ばいでもリターンは配当分プラスです。一方、株価の大きな上昇は見込みづらい推移です。配当は漸減または横ばいです。
トータルリターンは米国大型株(SPY)、NASDAQ(QQQ)に劣後しています。
PFF・ARCCの比較
ちなみに、「①高配当・②金融危機に弱い」という共通の性質を持つ米国株に、【ARCC】があります(詳細は最下段の関連記事に載せておきます)。
下表に、ARCCとの比較をまとめました。
PFF | ARCC | |
---|---|---|
配当(平時) | 約5% | 約9% |
金融危機 | 弱い | 弱い |
分散度 | 約300銘柄 | なし |
PFFは分散されたETFであるのに対し、ARCCは個別株です。ARCCは「その個別リスク(分散されていない)を負うことで、より高い配当を得ることをめざせる」という整理が可能ですね。
PFFへ投資して感じた6つの特徴を踏まえた活用法
以下再掲します。
- 高配当で毎月分配、再投資効率は四半期配当と同じ
- リーマンショックでは、70%の下落(金融危機に弱い)
- コロナショックでは、市場平均より底堅い(金融危機に至らなかった)
- 弱気相場では、信用収縮なければ一定の底堅さ
- 金利上昇局面(2022年)で株式・債券と同様に弱い(ただし、分配金は増える)
- 株価の右肩上がりは見込みづらい
ゆえに、以下の活用法が想定できます。
- 平時の配当金目的での分散先(たとえば上限10%)
- (特に信用収縮を伴う)弱気相場で大きく下げた時に、多くの配当金と含み益(安全域)をねらう目的で購入
金融危機など信用収縮を伴う弱気相場に脆弱であるということは、逆に言えば、底で拾えれば安全域でインカムを多く生むお宝銘柄になり得るということですね。ARCCやほか高配当株ETFと同様です。
弱気相場で信用収縮を伴わない局面(つまりPFFが底堅い局面)で、株式とのリバランス(底堅いPFFを売って下落の激しい株を買う)目的で保有する策も考えられます。これはやや玄人向けと言えそうです。
平時は値動き極小です。人によっては心理面を考慮して、一部組み込むという考え方もできるでしょう。ただ、平時に値動き小さく高配当ですが、大きな勝ちは望みにくいですね。
繰り返しながら、信用収縮を伴ったリセッションでは弱いことが想定されます。その際、ろうばいしないように注意、といったところでしょうか。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone!
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