読者の方から、「ゴールド(純金)を保有・投資する意義」についてご質問頂きましたので、以下「3つの意義」を詳述致します。尚、関連記事に純金積立の注意点を記します。
私も社会人になって3年間ほど純金積立をしていましたが、結論から申し上げますと、ゴールドを保有する意義自体はあるものの、純金積立は手数料がやや高く、積極的にはおすすめしません。
「ゴールドへの投資で利益を得ることを目的にする」というより、「世界経済の崩壊や貨幣制度の崩壊など実現可能性は低い甚大なリスク(=テールリスク)に備えたい人」にとっては、保有に好適と思います。
1.希少性に起因する価値
2.インフレヘッジ
3.有事の保険
純金(ゴールド)に投資する3つの意義・メリット
題名: 「有事の金」について
メッセージ本文:
三菱サラリーマン様、はじめまして。
毎日ブログの更新を楽しみにしています。
最近、世界情勢が不透明感を増すにつけ、「有事の金」の宣伝がや
曰く、資産全体の10%程度はゴールドで保有すべきとか、株式は
ゴールドの価値が高騰した時に売り抜けて儲けるのが目的なのか?
三菱サラリーマン様が考える金投資の意味についてお聞かせいただ
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。
ゴールド(純金)を持つ意義①:その希少性ゆえ、現物そのものに、信用を源泉としない価値がある
基本的に財やサービスの価格は、需要と供給の相対量に基づいて決まるわけですが、ゴールドには供給面での制約(=希少性)があります。

出所:World Gold Council「How much gold has been mined?」
金の国際機関World Gold Councilによれば、「2017年末時点で、ゴールドは190,040トンが採掘され、残る埋蔵量は54,000トン」ということで、80%が採掘済。当該前提に則れば、追加採掘可能量は限定的です。
現在2,500~3,000/年ペースで採掘されており、いずれは枯渇すると言われています。これが希少性があると言われる所以です。
物の価格というのは需要と供給の相対量に基づいて決まります。
希少性があるため、無限に信用創造できる中央銀行が発行する貨幣と異なり、ゴールドそのもの自体に価値があります。
これが最大の特長であり、後述するもう2つの特長にも繋がります。
貨幣はそのもの自体の価値は0に近い(希少性の高い鉱物を用いて鋳造する貨幣は除く)です。
しかし、政府が流通貨幣として信用を担保し、権威性を付与しているため、“信用”を源泉とする実質的な価値があるわけですね。
普段何気なく日本円というものに価値があると思っているかもしれませんが、それはあくまで日本という国に対して国民や諸外国の人々から今の所 “信用”(=通貨に対する信認) があるからですね。
例えば東南アジアのラオスでは、自国通貨への信認が低い為、隣国のタイバーツの方が流通量も多く、汎用性が高い地域もあるくらいです。
通貨そのもの自体に価値はないので、通貨への信認・信用がないと、価値が保全されない好例でしょう。
しかしゴールドは、紙幣や硬貨のように無尽蔵に作れません。数量が限定的である以上、通貨という概念が崩れた際にも希少性という独自の価値を持ちます。
腐食しない為、外観的美しさも保全され、一定の需要があります。
特にリーマンショックから今に至るまで、FRB・ECB・日銀は紙幣を大量に発行・供給し、バランスシートは拡大し続けています。(FRBの一時的な利上げ期を除く)
いわば、「通貨の減価政策」とも言える非伝統的な政策を行い続けていますから、その対照的な存在として、ゴールドの価値は光りますし、実際に中央銀行のマネタリーベースの急増に比例して金の価格が上がってきました。
ゴールド(純金)を持つ意義②:インフレヘッジになる
基軸通貨は英ポンドから米ドルというように変遷がありましたが、ゴールドは基軸通貨がどこになろうが、ゴールドはゴールドです。希少性と需要が保たれる限り、価値は保全されます。
通貨の信任が揺らぐなどの要因で、通貨価値が下がった際には、ゴールドの相対的な価値は上がります。

出所:World Gold Council「Gold Demand Trends Q2 2019」
尚、各国中央銀行は2019年上半期に過去10年間で最大となる374.1トンのゴールドを購入しています。
ちなみに、特に中国とインドが買っています。米国の保有量は元々多いです。
通貨を発行する本家本元の中銀ですら、ゴールドを大量に買い付けているわけですね。
そもそも1944年のブレトンウッズ体制以降の金本位制では「中央銀行のゴールド保有価値を裏付け、金との交換を保証した上で通貨を発行」していたぐらいですから、ゴールドという価値の普遍性を物語っています。
ゴールド(純金)を持つ意義③:有事の保険になる
戦争や天災など有事が起きた際やリスクオフの局面で、ほかのアセットより相対的に強い傾向にあるのがゴールドです。
世界経済の崩壊や貨幣経済の崩壊等々のテールリスク(=可能性は低いが、実際に起こると極めて甚大な影響のあるリスク)を意識し、備えたいのであればゴールドは好適です。
なぜなら、①で述べた通り、その希少性ゆえ、そのもの自体に価値があるからですね。
どのような事態が起ころうと、比較的普遍的な価値がある財となるのがゴールドです。
日本の政府債務が民間部門の純資産を超えるXデーへの一定の備えにもなるでしょう。
ゴールドを保有する意義まとめ

出所:World Gold Council
ゴールドは過去20年間で1オンスあたりの価格が273ドルから1,499ドルと約5倍です。中央銀行のマネタリーベース激増に比例して金の価格も上昇しました。
とはいえ、あくまで価格上昇を見込んで購入する対象というよりは、あくまでインフレヘッジであったり、有事の際のヘッジであったりと言ったあくまでサテライト的な活用と思います。
個人的には、やはり配当というキャッシュフローがないこと、そして純金積立となると手数料が高いことから、資産運用目的でゴールドを保有する予定はありません。
ただし、何かあった際に延べ棒にして金庫に入れておいたり、相続にゴールドを用いるなど、そういった活用の仕方は普遍的な価値を持つゴールドならではと思います。
お子さんの誕生日に金貨を1枚ずつ積み立て、成人した時にプレゼントするのも個人的には一案と思います。
Best wishes to everyone!
尚、純金積立は正直おすすめできません。なぜなら、手数料が高いからです。
MMTや仮想通貨など、貨幣に関する言説は様々ですが、ゴールドはその有力な代替資産になり得ます。
そもそも貨幣とは何か、ということについて記したものです。