【BP銘柄分析】高配当6%超えのスーパーメジャー、配当の二重課税なし

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BPは、私が約6,000ドル投資している石油メジャーの一角です。

ポートフォリオにおける占有率は、約0.8%となっています。

漏油事故という潜在的なリスクや、業績が原油や天然ガスなど資源価格(外的要因)に大きく左右されるため、少額の投資としています。

原油先物は低迷中。2019年12月には、原油価格の長期低迷を見越して減損損失を計上するシェブロンのようなオイルメジャーも。BPも2019年3Q時点でアラスカ事業の売却損を計上しています。

原油先物の低迷が続けば同社の配当持続性には疑義が生じるため、要注意。

2010年Deepwater Horizon漏油事故後、キャッシュフローや業績はエクソン・シェルに見劣りしていました。

【BP銘柄分析】高配当6%超えのスーパーメジャー、二重課税なしのADR

BP(旧称:British Petroleum/ブリティッシュ・ペトロリアム)は、英国本拠の石油・ガスの採掘・開発(上流部門)から精製・販売(下流部門)まで一貫して手掛けるスーパーメジャー。2019年売上高は2,780億ドルとメジャー勢らしく巨額。

以下同社の特徴をトピックごとに挙げます。

  1. ダイベストメント
  2. ESG投資
  3. ロシア事業
  4. メキシコ湾原油流出事故

特徴①:ダイベストメント

ESG投資や低炭素社会の流れから、石油関連事業のダイベストメント(投資撤退)を進めており、2019年に同社石油関連事業の60年来の象徴「アラスカ事業」を売却。

LNG(後述の通り拡大中)に加え、太陽光・バイオ・風力などの再エネ投資を米州・欧州・中東・豪州などで足下増やしています。

更に、炭素排出量(carbon emission)の削減において、BPやロイヤルダッチシェルはエクソンより積極的に取り組んでいる姿勢が、2019年JPモルガンのレーティングにおいては評価。

また、2020年2月には「自社の排出する温室効果ガスを2050年にゼロにする」との目標を掲げ、環境対策に十分でない石油団体から脱退するなど、オイルメジャーの中でも環境対策に積極的な企業です。

特徴②:ESG投資

エクソン・モービル【XOM】やロイヤル・ダッチ・シェル【RDS A/B】などと共に、スーパーメジャー、オイルメジャーとも呼ばれるBPですが、昨今のESG投資の観点から年金基金など機関投資家の投資対象からは外されています。株価にはネガティブです。

特徴③:ロシア事業

BPはロシアと関係が深く1990年から約30年にわたりロシア事業に参画。

ロシア国営企業のロスネフチに出資(出資比率:19.75%)し、ロスネフチとの合弁会社も設立するなど、共同で石油・ガス探査から生産まで従事。

特徴④:メキシコ湾原油流出事故

BPで外せないトピックとして、メキシコ湾原油流出事故(2010年)があります。

同事故では環境面だけではなく事故関連費用は今も同社の資本を圧迫。(2019年決算で営業CF282億ドルのうち24億ドルを同費用が占有。2020年は10億ドルを見込む。)

同業エクソンモービルの沿革を綴った書籍「石油の帝国」にも大きく取り上げられた事故です。石油メジャーは環境面や投資対象国の安全保障に至るまで、多様なリスクマネジメントが求められる産業と言えます。

【BP】基礎データ

BPの基本情報は以下の通り。

社名 BP PLC
ティッカー BP
設立日 1909年4月
本社所在地 英国ロンドン
従業員数 73,000人
セクター エネルギー
連続増配年数 6年
直近配当利回り 6.9%
直近4年平均配当利回り 6.5%
直近3年累計増配率 2.5%
直近5年累計増配率 5.1%
配当月(支払日ベース) 3, 6, 9, 12
1株配当 $2.52
1株利益(2020年予想) $3.34
配当性向 75.4%
PER 10.9倍

(2020/1/2時点)

2010年のDeepwater Horizon漏油事故による減配を経て、連続増配年数は6年。市況軟調な中、2020年2月4日に増配を発表。増配率は高くないものの、配当利回りは伝統的に5%を超える高配当です。

更に、冒頭に述べた通り、英国ADR銘柄のため配当の二重課税がないことも特徴。

ADR(米国預託証券)
American Depositry Receiptの略称。
元々は、米国の投資家向けに米国以外の企業に自国通貨(ドル建て)で投資できるように作られたもの。
米国株は通常、受取配当金に外国税として10%源泉徴収されますが、当該BPのADRはこの10%が非課税

減配の可能性に注意

ただし、原油価格や天然ガス価格の市況に大きく左右される業態であり、漏油事故や市況の長期低迷となれば、減配可能性も出てきます。Deepwater Horizon漏油事故関連の補償支払は、今も毎年費用計上され、同社キャッシュフローに対して依然影響あり。

【BP】セグメント別売上高

BPのセグメント
  • UPSTREAM(上流部門)
    従来型石油・ガスやシェールガスの採掘・輸送を指します。
  • DOWNSTREAM(下流部門)
    石油化学製品を指し、具体的には原油・ガソリン・ディーゼル・灯油・航空機用燃料・船舶用重油・潤滑油・オイルサンドの精製などが該当。

上流部門・下流部門ともに市況良化と共に2018年まで伸長。2019年は反落。背景にはやはり資源価格の軟調さがあります。

【BP】契約別売上高

ESG投資が声高に叫ばれて以降、LNGや再生可能エネルギーへの投資に積極的です。

2018年まで原油・石油製品は原油価格の上昇と共に売上高も増大、LNGも伸長。2019年はLNG価格下落も、LNG関連売上高は202億ドルと前年比1.5倍。事業ポートフォリオに変化あり。

直近トピックとして、

  1. アラスカからの投資撤退など資産入れ替え
  2. 中国Didi(滴滴出行)と合弁設立、電気自動車への充電事業参入
  3. インド財閥大手リライアンスと組んだ燃料販売
  4. 全事業のメタン排出量明記コミット

など旧来事業から転換姿勢。2019年通期決算ではリライアンスとの事業拡大を示唆。

【BP】売上高・営業利益・純利益

BPの業績推移(①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージン)を見てみましょう。

BPの業績推移はかなり激しめに上下しています。先述の漏油事故や原油価格の乱高下に伴い売上高も大きく上下。

株価も後述の通り、原油価格との連動性が極めて高いです。

【BP】株価と配当利回り推移(2007年~)

過去10年間における平均配当利回りは5.8%です。

2010年は漏油事故により株価暴落、配当利回り急上昇も、のちの減配により配当利回りも急落という乱高下。

以降株価はほぼ横ばいながら配当利回りは4%~7%台と高水準で推移、増配も若干ありますが増配幅は大きくはありません。2020年直近は2.4%増配です。

【BP】株価と配当利回り推移(過去5年)

過去5年間の平均配当利回りは6.4%です。

2015年の原油価格急落時に株価も安値を付けました。その際は配当利回りは8%に高まり、減配リスクも感じさせる数字でしたが、踏ん張りました。

後述の通り、2016年にはフリーキャッシュフローも60億ドルの大幅な赤字も、またも減配なし。直近キャッシュフローは前述・後述の通り良化しています。

2019年8月末に配当利回りが一時7%に迫る勢いでした。

【BP】配当金と配当利回り推移

Deepwater Horizon漏油事故を受け、2010年から2011年にかけ、1株配当は0.84ドルから0.42ドルに半減となる大減配。

その後2015年以降は小幅の増配。今後も余程の大きな変革がない限り、増配幅は良くて小幅か横ばいに留まることが予想されます。減配なければ御の字という水準の高配当具合とも言えます。

なお、直近2020年2月4日には、2.4%増配(四半期配当 $0.615 → $0.63)が発表されています。

【BP】キャッシュフロー推移

①営業キャッシュフロー・②投資キャッシュフロー・③フリーキャッシュフロー・④営業CFマージンを見てみましょう。

キャッシュフローは安定感に欠けます。特にフリーキャッシュフローは過去10年間で4回も赤字になっています。エクソンモービルとは対照的です。

ただ直近2019年は堅調に推移。2018年通年のフリーキャッシュフローを2019年3Q時点で既に超え、4Qも好調維持にて着地。

【BP】フリーキャッシュフロー・配当支払額・自社株買い・債務増減・配当性向(FCFベース)

  • 配当支払額、多い。
  • 自社株買い、2019年に増加。
  • 2017年からFCFプラス転換。
  • 2019年フリーキャッシュフロー堅調。
  • 2016年以降、借入続くも2019年やや返済。

2019年決算は、ブレントやWTIなど原油市況が前年同期比で各々7ドル・8ドル悪化するも、営業キャッシュフローは前年比10%増の257億ドルと堅調を維持

配当性向(FCFベース)は以下通り。

  • 2016年: -77 %
  • 2017年:  260 %
  • 2018年:  109 %
  • 2019年:    67 %

【BP】借入金推移・DEレシオ

借入が続くBPの債務推移とDEレシオを見てみましょう。

※IFRS16で適用となったリース債務を含む

2019年の債務増加分は、リース債務がほとんどを占めます。長短借入金が年々増えているものの、DEレシオは健全とされる100%を下回る79%。

ただしBPはスーパーメジャーの中で、財務レバレッジが高い点には留意必要と思います。尚、2020年4Qには純債務を10億ドル減らしており、CFOは「2020年に更に減少を見込む」としています。

【BP】配当政策

Annual Report 2018には、2019-2021年のガイダンスとして「Progressive dividend and a continued share buyback programme」との記載。

この場合のProgressiveは、Longman英英辞書での「developing gradually over a period of time」であれば、「漸増的な増配」との意。

【BP】銘柄分析まとめ

BPの特長を、以下再掲します。

BPの特長
  1. 6%を超える高配当
  2. 配当の二重課税なし(米国株で一般的な10%の源泉徴収税なし)

ただし、繰り返しながら株価も業績も原油価格や天然ガス価格次第ですし、漏油事故や市況低迷等が起きれば減配可能性も出てくる等々リスクはやはりあるため、例えばあくまでポートフォリオの3%以内に留めるなど分散は徹底しておきたいところです。

キャッシュフローは過去不安定ながら、直近強いことは好材料です。市況が悪い中でと増配という形で表出してはいますが、いずれにせよ今後の資源価格次第でしょう。

Best wishes to everyone!

財務的には同業エクソンの方が優れています。

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公開日:2019年9月20日