米ISM製造業指数が3年ぶりに景気拡大・縮小の節目となる50を割り込みました。
また、そもそもISM製造業指数とは、ISM(Institute for Supply Management / 供給管理協会)が発表する製造業における景気転換の先行指標であり、50が好況・不況の境目。
製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査の結果を集計・公表したものです。
新規受注や生産などの項目において、前月比で「良い」「変わらず」「普通」の3択形式。米主要経済指標の中で発表時期が一番早いことが特徴です。
直近20年間のリセッションとの関係を見返しますと、次は米ISM非製造業指数が50を割り込むのかがリセッションを示唆するのか否かの注目ポイントになりそうです。
米ISM製造業指数50割れ、次は非製造業指数に要注目
米供給管理協会(ISM)が3日公表した8月の製造業景気指数は49.1と、前月の51.2から低下し、2016年8月以来初めて景気拡大・縮小の節目となる50を割り込んだ。
米中貿易摩擦が企業業況感の重しとなる中、内訳の新規受注や雇用が悪化し、全体を圧迫した。
日本、ユーロ圏、英国、中国ではすでに製造業活動が縮小しており、米国もこれに追随する格好となった。ただ、エコノミストが景気後退(リセッション)の水準とみなす43の水準はなお上回っている。
8月の製造業景気指数はまた、16年1月以来の低水準となり、市場予想の51.1も下回った。同指数の低下は5カ月連続。
ISMは「企業信頼感が著しく低下した」と指摘。「貿易は引き続き最大の課題で、輸出向け新規受注が大きく落ち込んだことがそれを示している」とした。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズの首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「製造業活動が縮小したことで、消費支出が持続するかが今後一段と重要になってくる」と述べた。
内訳では、先行指標として注目される新規受注指数は47.2と、前月の50.8から低下し、12年6月以来の低水準。とりわけ、輸出向け新規受注は4.8ポイント低下し、09年4月以来の水準に落ち込んだ。
雇用指数も47.4と51.7から低下し、16年3月以来の低水準となった。
米ISM製造業指数が3年ぶりに景気拡大・縮小の節目となる50を割り込みました。50を割り込むことは、投資家にとってセンセーショナルな出来事であり、注目に値します。
下図は1997年から2019年8月に至るまでの「①米ISM製造業指数・②米ISM非製造業指数・③景気後退期(リセッション)」の関係を表した図です。
(出所:全米経済研究所)
上図が示す通り、リセッション入りする前に、過去2回とも米ISM製造業指数が50を割り込んでいることから、リセッション入りの1つのサインにはなり得ます。
一方、ピンク色の丸で示した部分(2012年・2015年)を見て頂くと、ISM製造業指数が50を割り込んでいるものの、非製造業指数は50を割り込んでいません。結果、リセッションを迎えず、景気は踊り場に留まりました。
つまり、確かにISM製造業指数が50を割り込むことは、「リセッション入り」を示唆するものの、更なるポイントとして、「非製造業指数が50を今後割り込むのか」という点が挙げられます。
非製造業指数も50を割り込めば、リセッションの示唆性は高まります。しかし内需が堅調な目下、非製造業指数が堅調維持となれば、また踊り場に留まることも考えられます。
後段で示す関連記事の通り、リセッションを迎えれば、通例株価も大きく調整しますから、債券や現金・MMFと言った安全資産の割合を増やすことも一案です。
いずれにしても、製造業指数が50を割り込んだ今、非製造業指数も50を割り込めば、いよいよリセッションを強く意識する段階に至るかもしれませんので引続き注目指標と思います。
株式投資をする以上は、株価が半値かそれ以下になり得ることを逐次念頭に置きつつ、ポートフォリオを組成したいところですね。
(追記)
昨夜ISM非製造業指数が発表されましたが、予想54に対し56.4と50を割り込むどころか予想を上回る強い数字でした。引続き注目指標と思います。
以下関連記事です。
リセッションの際に、過去どの程度株価が下落したのかをまとめたものです。
リセッションにおける投資戦略についてです。
目下、予防的利下げの局面なわけですが、利下げとリセッションの相関性を示したものです。