「リセッションにおける投資戦略」という記事で、「いずれにしても焦らないことです」と結びました。
では焦らないようにする方策の1つとして、「客観的な観点を持つこと」が挙げられます。
客観的にマーケットの状態を確認する指標として、「Fear & Greed index」があります。以下ご紹介します。
「Fear and Greed index」とは
最近は市場でも自動売買やAIを用いた取引が存在感を増してきました。しかし、まだまだ市場心理・センチメント、つまり人々の感情は、市場の雰囲気を大きくつかむために重要な要素のひとつだと私は考えます。
そこで参考になる指標を以下ご紹介したいと思います。
Fear & Greed indexと呼ばれ、直訳すれば「恐怖と貪欲さの指標」。投資家の感情は大きく2つに分けることが出来ます。
1.恐怖
2.強欲
投資家の「恐怖」が「強欲」に勝っている局面では、投資家は株を投げ売りするため、株式市場は相応に下落します。市場が底冷えに向かうような局面ですね。
一方、投資家の「強欲」が「恐怖」に勝っている局面では、投資家は更なる上昇と利益を期待して買い上がります。市場が過熱途上であるような局面ですね。
その恐怖と強欲が各々どの程度、市場に混在しているかをCNNが指標化したものが、「Fear & Greed index」です。
ちなみに2021年12月1日では「27」です。恐怖指数の最低は1なので、まだ総悲観とは言えない状況のようです。
Fear and Greed indexの構成要素と過去推移
具体的に当該Indexの算出方法を確認しましょう。
- 株価モメンタム(勢い)
S&P500と125日移動平均線との乖離 - 株価の強さ
52週高値と安値にタッチした数 - 株価の振れ幅
上昇局面・下落局面における取引量 - オプション
プットとコールの割合 - ジャンク債需要
投資適格債とジャンク債のイールドスプレッド(利回り差) - 市場ボラティリティ
VIX指数を参照 - リスク回避需要
株式と国債のリターン差異
これら項目が平均値からどの程度乖離しているかで0から100で指数化したものが「Fear & Greed index」です。
2016年3月~2019年3月の推移は下図の通り。
ちなみに、リーマンショック2008年9月17日には「Fear & Greed index」は、12まで下落しました。その後、2009年3月9日には28まで戻し、強気相場が開始。
2018年末の下落局面
比較的最近の2018年12月24日には、2まで下げていました。

Fear & Greed Index(2018年12月25日時点)
私はこの指数は結構参考になると思っていて、時折チェックしています。
特に2018年末においては、当該指数はツイッターのタイムラインでのコメント等を見るに、市場のセンチメントをよく反映していたと思います。
コロナショックにおける下落局面

Fear & Greed Index(2020年3月9日時点)
サーキットブレーカーが発動し、2013ドル安という歴史的な下げ幅となった2020年3月9日には3を記録、のち2020年3月12日には1を記録しました。
当時の推移は以下の通り。
3月5日に9、3月6日に7、週明け3月9日に3、3月12日に1を記録しました。そこからやや反発といったところ。
2021年の市場好調期
2021年6月~8月において特徴的というか異例な状態が続いていると感じています。それは、市場は最高値を更新中にもかかわらず、当該指標は50を下回った30台の推移で長く続いていることです。この数年、あまりこういうことはなかったので珍しい現象だと思います。
Fear and Greed Indexは売買指標に使えるか
では、このFear & Greed Indexが「強気相場・弱気相場のシグナルとして、売買指標に使えるか」という点が最も気になるところだと思います。
2010年から2013年において、実際にバックテストしたデータがあります。
バックテスト前提としては、Fear & Greed Indexが50以上で買い/買い持ちし、50を下回ると売りというシンプルな形です。
I extracted data from CNN’s site using a plot digitizer (pretty cool). My algorithm is pretty simple. It buys/holds when the index is above 50, and sells/holds when the index is below 50, though that number and the security it trades can easily be modified.
結論から言うと、時期によってはベンチマークを上回るものの、時期によっては下回るため、明確なシグナルにはなり得ないです。
ただ、市場のセンチメントを知ることは、市場と対峙する自分を客観視する際に非常に参考になります。なぜなら、自分のGreed・Fearさを、市場参加者全体のセンチメントと比較できるからですね。
活用法①:市場と自分を比較して客観視する
自分がどれほど、ユーフォリア(陶酔感)に浸っていたか、通常あとになってわかります。それを客観視しておけば、自ずと対策は浮かぶでしょう。対策とは、やはり冷静に客観視しておくことですね。
では、どのように客観視すればよいでしょうか。そのツールとして、Fear & Greed Indexがあります。
これらは数字で端的に市場心理を直接的または間接的に示唆するため、市場と自身の心理状態を客観的に比較する上で有用です。
市場と同様にGreedy/強気になっていると危険ですし、市場と同様にFear/弱気になっているのも不味と思います。
株式市場においても日常においても大衆に流されるのではなく、自分なりの考えで、自分なりに行動すること、肝要です。
リセッションが来ても、定量化された当該指数を参考にして、今現在マーケットがどのような状態なのかを確認することで、狼狽売りを避け、客観的にマーケットに臨む際に有用です。
活用法②:購入タイミングに裁量性を持たせたい場合にも有用
また、活用法の一例として、「年に数回は、Fear & Greedが30を割る局面」がみられます。その際に現金余力を残しておくのも一手です。
購入タイミングに裁量性を持たせたい場合には、有用な指標になり得ると思います。
Best wishes to everyone!
関連記事
リセッションにおける投資戦略について述べたものです。
リセッションにおける過去の傾向です。
コメント
目先のニュースに惑わされて危うく狼狽え売りしてしまうところでした。
記事の内容に冷静さを取り戻せました。
ありがとうございました。
ありがとうございます、よかったです!