株式に長期投資する際には、やはり分散を図ることが必要と考えます。
具体的には、「①セクター、②時間軸、③銘柄」の分散が、幅広い層の方々にとって取り組みやすい1つの形と思います。
本記事ではそのうちの「①セクター」の分散について記します。
米国株のセクター構成:景気敏感型6+ディフェンシブ型4
そもそも株式投資に長期間取り組むには、心理的な負荷は少ないに越したことはありません。なぜなら、心理的な負荷が大きい行動は長続きしないからですね。
もし自身の株式ポートフォリオの値動きを長期間にわたって”比較的”マイルドにして、心理的な負荷を”比較的”抑えたいのであれば、セクターを分散させることが一案です。
そもそも米国株は以下の通り、「6つの景気敏感セクター」+「4つのディフェンシブセクター」の合計10セクターから成ります。セクターごとの代表銘柄も併記します。
景気敏感セクター
- 情報技術
AAPL・GOOGL・MSFT - 一般消費財
AMZN・CMCSA・HD - 金融
JPM・WFC・BAC - 資本財
GE・MMM・BA - 素材
DOW・DD・MON - エネルギー
XOM・CVX・SLB
ディフェンシブセクター
- 電気通信
T・VZ・TMUS - ヘルスケア
JNJ・PFE・MRK - 生活必需品
PG・KO・PEP - 公益事業
NEE・DUK・SO
これらセクターから成る米国株の特徴を以下述べた上で、セクター分散が一案となる背景を記します。
米国株の特徴①相場の各局面でセクター別リターンは大きく異なる
繰り返しながら、「株式ポートフォリオの値動きを長期間にわたって比較的マイルドにしたいのであれば、セクターを分散させることが一案」と述べました。
JPモルガンの資料「米国株のセクター別の各強気相場における特徴」が明解なので、相場局面の一好例として掲載します。
「セクター別」のリターンを更に拡大したのが下図です。
上図の通り、同じ強気相場1つ取ってみても、情報技術セクターから公益事業セクターに至るまで、セクターによってリターンは様々です。
各年代における強気相場での強いセクターは以下通り。
年代 | 高リターンセクター | |||||||
1997 – 2000 | 情報技術 | |||||||
2003 – 2007 | エネルギー | 素材 | 電気通信 | 公益 | ||||
2009 – 2012 | 一般消費財 | 資本財 | ||||||
2012 – 2015 | 一般消費財 | ヘルスケア | 金融 | |||||
2015 – 2018 | 情報技術 | 一般消費財 |
以上のように、同じ強気相場1つ取っても、セクターの強弱は大きく異なります。ポートフォリオのばらつきを比較的抑えたいのであれば、セクター分散は一案です。
尚、2017年の下落局面では、公益セクター【SO】や【DUK】がやはり格段の底堅さを見せたのも印象深いです。
こういった下落局面でも強い銘柄がポートフォリオにあると、心理的に大きいですね。
逆にコロナショックでは、【RDSB】【XOM】などエネルギーセクターが弱かったです。
セクターの盛衰・循環を予測するのは不可能なので、分散が有効な対策になります。
米国株の特徴②強気相場では景気敏感セクターがディフェンシブセクターを上回る
強気相場においては、やはり景気敏感セクターが全般的にディフェンシブセクターを上回っています。
一般消費財・金融・資本財は概ね安定して強く、逆にエネルギーセクターは市況の影響も強いためリターンの上下動は非常に激しくボラタイル。
米国株の特徴③強気相場ではグロース株がバリュー株をアウトパフォーム
セクターの厳密な意味とはやや離れますが、強気相場における特徴として、グロース株がバリュー株を長期間にわたってアウトパフォームしています。
これを見てもわかるとおり、各投資対象はパフォーマンスが良い時期とそうでない時期がありますね。良い時期とそうでない時期があるのは、特定のセクターにおいても同じです。
米国株の特徴④S&P500が各局面で最も平準化されている
で、更に見て頂きたいのは、下図最左列S&P500の部分です。
リターンが平準化されています。当然といえば当然の帰結です。
市場平均という名の通り、S&P500は広範にセクターも分散されます。
セクターが分散されるということは、セクター別で相場局面ごとにリターンの強弱が入り混じる中でも、その強弱が平準化されるということなので、頷けます。
S&P500に幅広く分散されたVOOなどに代表されるETFは、リターンだけでなく、セクター別の分散もしやすく、魅力的な投資対象の1つと言えます。
“比較的”安定した値動きを望むなら、米国株のセクターは分散させることが基本。まとめ。
ポイントをまとめます。
- 特定の投資対象・特定のセクターは、局面によって良い時とそうでない時がある
- セクターの盛衰は予測不可能、ゆえにセクター分散によってリスクを分散
同じ強気相場においても、その局面ごとに各セクターのリターンは千差万別です。更にそのリターンの差は顕著であることが資料に表れています。
集中投資をせず、配当金に代表されるインカムゲインを主眼としたポートフォリオを組み、比較的値動きをマイルド・平準化したいのであれば、セクター分散が一案です。(あくまで”比較的”であり、市場暴落時は、セクターが分散されていても連れて下落します。)
その意味において、ETFはやはり、従前よりおすすめしている投資対象であります。
Best wishes to everyone!
インデックス投資も、幅広い層におすすめできる投資手法の1つですね。2018年当時に記載の「インデックスと個別株の対比」については、以下のとおりです。
個別株の中では、高配当のバリュー株にするのか、無配のグロース株にするのか、大きく2つの選択肢がありますね。なお、幅広い層におすすめできるのは、ずばりETFです。
コロナショックにおけるセクター別騰落率です。