読者の方から以下投資信託
- 「MS(モルガン・スタンレー)グローバル・プレミアム株式」
- 「AR国内バリュー株式ファンド(通称サムライバリュー)」
- 「みのりの投信」
を保有しているので、その評価をして欲しいとのご要望がありました。誠に残念ながら、①と②はとてもおすすめできる商品ではありませんでした。今回は③「みのりの投信」をご紹介させて頂きます。
関係ないですけど、「みのりの投信」って面白い名前ですね。掲載写真の通り、「実りがあるよ」というコンセプトでしょうか。本当に果実を享受できそうか、つぶさに見てみましょう。
当該投資信託の手数料などの基礎データ・コンセプト/特色・トータルリターン・ベンチマークとの乖離を見ていきます。
「みのりの投信」の分析
「みのり投信」のコンセプト・特色
素敵なコンセプトですね。
「資産形成は、狩猟よりも農耕に似ています」
この文言には特に共感します。ましてや、日本人は元来農耕民族です。一方、狩猟民族のようにFXや仮想通貨などボラティリティが高く、レバレッジを利かせた取引を好む一面もあるようですが。
また、「みのり投信」は目論見書にしっかり運用責任者の顔や詳細なプロフィールが掲載されているところも好感が持てます。運用部長・ファンドマネージャー共に、ひふみ投信で有名なレオス・キャピタルワークス出身ということで、顔出し精神をしっかり継承されているようです。
「みのり投信」の基礎情報
基礎データ
- 運用会社 :ポートフォリア
- カテゴリ :国内小型グロース株
- 購入手数料:4.32%
- 信託報酬等:1.89%
- 売却手数料:0.00%
- 為替ヘッジ:市況動向次第
- 分配金取扱:年1回決算(3月末)、分配なし
- 設定日 :2013年4月30日
- 償還日 :無制限
手数料が高い。
ただ、残念ながらその購入手数料や信託報酬は高いと言わざるを得ません。
購入手数料(販売手数料)が0%のものが普及しつつある中、4.32%というのは高すぎます。いきなり大幅なマイナスから投資を始めることになります。50m走でスタート地点の2.1m後ろからスタートするようなものです。
対して、米国株投資家にはおなじみのVYMやVTIの信託報酬は0.1%を切る水準です。例えば米国高配当株式ETFのVYMの信託報酬は0.08%ですから、当該投信の1.89%は実に24倍です。
信託報酬は受託資産のスケールメリットでも下げ余地が出てくる類のものですから、受託資産規模で大きく劣る日本の金融機関はどうしてもコストの削減余地が乏しくなるのも事実かもしれません。
とはいえ、やはり高いことには変わりありません。
それでは次に、当該投資信託のパフォーマンスを見てみます。
「みのりの投信」組入れ上位10銘柄
まず目につくのは、組入れ2位のLIXILグループと8位アダストリアです。
LIXILは米GE出身の「プロ経営者」藤森氏が買収による海外展開を推進しましたが、業績は伸び悩み、次期社長はその方針の針を巻き戻すかのように国内重視に転換したのは記憶に新しいところです。株価は冴えません。
アダストリアの株価は更にひどく、業績は低迷、大幅に減配されています。
この2銘柄が上位ということは、当該投資信託のパフォーマンスを押し下げていることは間違いないでしょう。
トータルリターン(過去1・3・5年)
過去1・3・5年のパフォーマンスを確認しておきましょう。
過去1年ではパフォーマンスはマイナスとベンチマークに大きく劣後しています。
過去3年では優勢です。このグラフから諸手数料が年率で1.4%パフォーマンスを押し下げることを考慮しても、優勢となります。
過去5年では日経平均には負けるものの、TOPIXに小幅ながら勝っています。ただ、これも手数料の年率0.8%を考慮するとやはりベンチマークに負けます。
以上から、アクティブファンドとして高い信託報酬と販売手数料を顧客である投資家から徴収しているにも関わらず、その投資成績・パフォーマンスはインデックスに劣後しているということになります。
まとめ
投資信託「みのりの投信」を分析した結果、評価は以下の通りです。
- 販売手数料
- 信託報酬
- リターン(参考指数との乖離)
読者の方からご質問を頂きまして、MSグローバル・プレミアム株式・AR国内バリュー株式ファンド(サムライバリュー)と共に3日連続で投資信託をご紹介してきましたが、いずれも個人的におすすめすることはできない内容でした。
しかしながら、3つのファンド共に純資産が基準価額を上回って増加しています。ということは、投資家の資金が新規で流入していることを示唆します。
投信の保有コストが非常に高いにも関わらず、新規流入があるわけです。
日経新聞に先日ありましたが、「投資信託を保有する個人投資家の半数近くが損失を抱えている」という実態が、金融庁が投信を販売する銀行に実施した調査で明らかになりました。
この3つの投資信託はあくまで数多く設定されている投信の一端でしかありませんが、この手数料水準・パフォーマンス水準でも依然として新規資金が流入しているという現実は、上述の実態があることが一定程度腑に落ちるに十分です。
投資信託には「ひふみ投信」のように過去市場平均を大きくアウトパフォームしたものもあります。しかし、依然としてユーザーフレンドリーでない、投資家のリターンを犠牲にして金融機関が収益を上げる商品があるのも事実です。
もし自身の保有する金融商品に疑問がある際は、お気軽に質問頂いて全く構いません。
ご参考になれば幸いです。
Best wishes to everyone!
ひふみ投信は確かに市場平均を大きくアウトパフォームしてきたその実績は素晴らしいの一言です。ただ、個人的にはここから入るのは勇気が要ります。
私の推しETFである、VYMのリターン・配当推移・信託報酬などを詳述したものです。ただし、当然ながら金融危機などでは他の株式同様に大きく下がり得ることには留意が必要です。
高配当株を個別で買うことで、配当収入という不労所得を最大化させるのも一案です。私はそうしています。