米製薬大手アッヴィ【ABBV】は、高配当・高増配・高いトータルリターンを示した米医薬品大手です。
- 高いキャッシュ創出力
- 高い増配率
- 50年連続増配
- 主力製品「アッヴィ」からの脱却
アラガン買収で製品ポートフォリオは多様化。主力製品「アッヴィ」への依存から脱却が進んでいます。
【ABBV】アッヴィ、高配当・高増配ヘルスケア企業。アラガン買収で多角化すすむ。
アッヴィ(別称アブビー)【ABBV】は、米製薬大手アボット・ラボラトリーズ【ABT】から2013年に研究開発部門が分離・設立(スピンオフ)された企業です。
ABT時代からの連続増配年数は49年と長く、安定した収益基盤を維持してきたことを示唆します。
【ABBV】基礎データ
アッヴィの基本情報は以下の通り。
社名(和文) | アッヴィ |
社名(英文) | AbbVie Inc |
ティッカー | ABBV |
設立日 | 2012年4月 |
本社所在地 | 米国イリノイ州 |
従業員数 | 30,000人 |
セクター | ヘルスケア |
連続増配年数 | 50年(ABT時代含む) |
直近4年平均配当利回り | 4.4% |
直近5年増配率(年率) | 17.9% |
配当月(支払日ベース) | 2, 5, 8, 11 |
1株配当(2021年増配反映) | $5.64 |
1株調整後利益 (2020年予想、2020年Q3決算時点) |
$12.57 |
予想配当性向(調整後EPSベース) | 44% |
株価 | $114.67 |
(2021年10月30日時点)
- 2019年Q3決算で通年調整後EPSガイダンス下限を引き上げ
($8.82~$8.92 → $8.90~$8.92)
前年EPS $7.91から11.5%増。高水準を維持。
2020年11月時点で、10ドル台とさらに伸長。 - 2018年は35.2%の大増配。▶【ABBV】アッヴィが35.2%の大幅増配!YoCが一気に6.4%に!
- 19年10.3%、20年10.2%、21年8.5%。増配率は高水準を維持。
- 調整後EPSベースの配当性向は44%。EPS成長に応じた適度な増配。
このように、業績堅調な連続増配株を保有し続けると、配当が増えていく傾向が見られます。
【ABBV】事業内容
新薬開発
- クローン病
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 低テストステロン
- 甲状腺疾患
- パーキンソン病
- 慢性腎臓病
- アルツハイマー病
特殊治療を要する医薬品
- 慢性腎疾患
- C型肝炎
- 婦人病
- 腫瘍
- 神経系疾患
アラガン買収で、さらに以下領域にも拡充。
- 美容(ボトックス注射)← New
- アイケア ← New
遺伝子組み換え型の関接リウマチ治療薬「ヒュミラ」が売上高の6割(2018年時点)を占めていました。
「ヒュミラの特許切れ以降、ポートフォリオが多様化できるのか」が注目ポイントであってきました。後述します。
ちなみに、製薬系の名の知れた企業としてはABBVの他にも以下企業群があります。
- 【JNJ】ジョンソン・エンド・ジョンソン
- 【AMGN】アムジェン
- 【BMY】ブリストル・マイヤーズ
- 【MRK】メルク
- 【PFE】ファイザー
- 【NVS】ノバルティス
- 【LLY】イーライ・リリー
【ABBV】株価と配当利回り推移
配当利回りは2.3~7.4%で推移。コロナショック時(2020年3月23日)に7.4%を記録。
2019年にアラガン買収による財務悪化懸念で、株価60ドル強まで下落。当時、配当利回りは7%弱まで上昇。
【ABBV】売上高・営業利益・純利益
①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージンを見てみましょう。
- 概ね右肩上がり。収益力を示す営業CFマージンも概ね25~40%と高水準。
- 売上高が伸びてきた背景に、主力製品のヒュミラの伸長。2020年はアラガン買収効果も寄与。
売上高全体に占めるヒュミラの売上と割合
- 売上高全体に占めるヒュミラの割合は、長らく60%以上も、46%(2020年3Q)に低下。ヒュミラ依存度は低下。
製品別売上高割合:ヒュミラ 61% → 46% まで低下
- 欧州 : 2018年
- その他 : 2021年
- 米国 : 2023年
米国では2023年まで特許残存も、欧州は2018年に特許切れ、その他主要国も2021年で特許が切れます。
よって、2021-2023年まではヒュミラに支えられた堅調な業績が期待されるも、「2023年以降ヒュミラに代わる新たなキラー医薬品を開発 or 買収等でポートフォリオの多様化が成されるか」が注目ポイント。

2018~2019年

2020年
- 神経科学・エステティック・アイケアなど買収したアラガンの領域が寄与
→ ヒュミラ比率は、61%(2018年)→ 46%(2020年)まで低下
→ 全体の売上高は、前年比30%増(2020年3Q時点)
- アラガンの強みであるボトックス系の製品が、製品別売上6位・7位に登場するなど、アッヴィの製品ポートフォリオの多様化に寄与しています。
- 抗がん剤「イムブルビカ(Imbruvica)」の売上も前年比15.2%増と堅調維持。同製品の外国売上は、パートナーのジョンソンエンドジョンソン【JNJ】と利益を分け合う形。
- 2016年4月に米FDAが認可した「慢性リンパ性白血病治療薬 Venclexta」も前年比79.5%増と急増。こちらは同じく製薬大手ロシュがパートナーです。
【ABBV】キャッシュフロー推移
アッヴィの「①営業キャッシュフロー、②投資キャッシュフロー(資本的支出)、③フリーキャッシュフロー、④営業キャッシュフローマージン」を確認します。
- 営業キャッシュフローマージン・フリーキャッシュフローマージンともに約40%と、米国企業の中でも極めて高い部類。
【ABBV】配当継続性
アッヴィの配当余力を確認すべく、「①フリーキャッシュフロー、②配当支払額、③配当性向(フリーキャッシュフローベース)」を確認します。
- 配当性向(FCFベース)は、46%と配当政策として適正な水準。(2020年3Q)
【ABBV】トータルリターン vs S&P500
ABBV・S&P500指数の配当再投資込みトータルリターン比較です。
青:ABBV、赤:S&P500
アボット・ラボラトリーズ【ABT】から分社化された2013~2020年12月において、市場平均のS&P500を上回るトータルリターンを残しています。
19.6% : ABBV
14.6% : S&P500
【ABBV】決算予想と実績EPS
上図の通り2018年4Q以外は全ての四半期決算において、EPSが市場予想と同等以上です。概ね市場の期待を上回ってきたことを示します。
【ABBV】配当金推移、配当月、配当支払日
以下の通り、配当支払月は2・5・8・11月。配当支払日は15日頃が通例です。増配発表は通例11月、増配タイミングは通例2月支払い日です。
配当発表日 | 配当落ち日 | 配当基準日 | 配当支払日 | 配当 |
10/30/2021 | 1.41 | |||
9/10/2021 | 10/14/2021 | 10/15/2021 | 11/15/2021 | 1.30 |
6/17/2021 | 7/14/2021 | 7/15/2021 | 8/16/2021 | 1.30 |
2/18/2021 | 4/14/2021 | 4/15/2021 | 5/14/2021 | 1.30 |
10/30/2020 | 1/14/2021 | 1/15/2021 | 2/16/2021 | 1.30 |
9/11/2020 | 10/14/2020 | 10/15/2020 | 11/16/2020 | 1.18 |
6/17/2020 | 7/14/2020 | 7/15/2020 | 8/14/2020 | 1.18 |
2/20/2020 | 4/14/2020 | 4/15/2020 | 5/15/2020 | 1.18 |
11/1/2019 | 1/14/2020 | 1/15/2020 | 2/14/2020 | 1.18 |
9/6/2019 | 10/11/2019 | 10/15/2019 | 11/15/2019 | 1.07 |
6/20/2019 | 7/12/2019 | 7/15/2019 | 8/15/2019 | 1.07 |
2/21/2019 | 4/12/2019 | 4/15/2019 | 5/15/2019 | 1.07 |
11/2/2018 | 1/14/2019 | 1/15/2019 | 2/15/2019 | 1.07 |
9/7/2018 | 10/12/2018 | 10/15/2018 | 11/15/2018 | 0.96 |
6/14/2018 | 7/12/2018 | 7/13/2018 | 8/15/2018 | 0.96 |
2/15/2018 | 4/12/2018 | 4/13/2018 | 5/15/2018 | 0.96 |
10/27/2017 | 1/11/2018 | 1/12/2018 | 2/15/2018 | 0.71 |
9/8/2017 | 10/12/2017 | 10/13/2017 | 11/15/2017 | 0.64 |
8/17/2017 | 7/12/2017 | 7/11/2017 | 8/21/2017 | 0.64 |
2/16/2017 | 4/11/2017 | 4/13/2017 | 5/15/2017 | 0.64 |
10/28/2016 | 1/11/2017 | 1/13/2017 | 2/15/2017 | 0.64 |
9/9/2016 | 10/12/2016 | 10/14/2016 | 11/15/2016 | 0.57 |
6/16/2016 | 7/13/2016 | 7/15/2016 | 8/15/2016 | 0.57 |
2/18/2016 | 4/13/2016 | 4/15/2016 | 5/16/2016 | 0.57 |
10/30/2015 | 1/13/2016 | 1/15/2016 | 2/16/2016 | 0.57 |
9/11/2015 | 10/13/2015 | 10/15/2015 | 11/14/2015 | 0.51 |
6/18/2015 | 7/13/2015 | 7/15/2015 | 8/14/2015 | 0.51 |
2/19/2015 | 4/13/2015 | 4/15/2015 | 5/15/2015 | 0.51 |
10/20/2014 | 1/13/2015 | 1/15/2015 | 2/13/2015 | 0.49 |
9/19/2014 | 10/10/2014 | 10/15/2014 | 11/17/2014 | 0.42 |
6/19/2014 | 7/11/2014 | 7/15/2014 | 8/15/2014 | 0.42 |
2/20/2014 | 4/11/2014 | 4/15/2014 | 5/15/2014 | 0.42 |
12/12/2013 | 1/13/2014 | 1/15/2014 | 2/14/2014 | 0.4 |
9/19/2013 | 10/10/2013 | 10/15/2013 | 11/15/2013 | 0.4 |
6/20/2013 | 7/11/2013 | 7/15/2013 | 8/15/2013 | 0.4 |
2/15/2013 | 4/11/2013 | 4/15/2013 | 5/15/2013 | 0.4 |
1/4/2013 | 1/11/2013 | 1/15/2013 | 2/15/2013 | 0.4 |
【ABBV】アッヴィ銘柄分析まとめ
- 高いキャッシュ創出力
- 高い増配率
- 50年連続増配
- 主力製品「アッヴィ」依存から脱却すすむ
収益力・増配力ともに現状は堅調、ヒュミラ依存も低下中。増配率も高く、配当性向も低めで、適正な配当政策にて配当余力も十分感じさせます。
今後も成長市場と目されるヘルスケアセクターで、成長を期待したい企業の1つです。
ご参考になりましたら幸いです。
Best wishes to everyone.
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